異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 33
リカバーを入れる暇もなく、宙に舞い上がった騎士団長は物理法則に従って地面に叩きつけられた。土埃が舞い上がり、大地に背中から落ちたシェリーちゃんは恍惚の表情をして両腕を天に伸ばす。
「はぁ~~~~っ! もっこもこのもっふもふだったぁ~~~~っ!」
「シェリーさんッ!? 大丈夫……ですか…………?」
「無論、無傷だ。安心してくれ」
「なんで無傷なんですか?」
心配するヘレナちゃんの前に、もふもふできて大興奮のシェリーちゃんがガッツのポーズで喜びをあらわにした。
対するふわふわきゃっとはこちらをみつめながら食事を続ける。野生のはずなんだが、ずいぶんと人に慣れてるのか、図太いのか、その場から逃げない。
単純に食べるの大好きなだけかもしれないけれど。
「しかし困ったなあ。もふもふした瞬間に空にぶん投げられるのか。フライの魔法を使ったうえで近づかないといけないな」
「よくぶっ飛ばされたところを見て、まだもふもふしようと思えますね……」
俺が呟くと、ヘレナちゃんは顔を青くして横目で変人を見る目をした。
「ネバーギブアップッ!」
シェリーちゃんは何度でもチャレンジする構え。
鬼人のノイマンさんは冷や汗たらり。
「噂には聞いていたが、なかなかの威力だな。小生はフライの魔法が使えないから、とても近づけん。して、シェリーはよく無事だったな。なにかの防御魔法かなにかか?」
「とっさに鉄壁の魔法を使って防御力を上げたので無傷です」
「鉄壁の魔法……いくらなんでも無傷というわけにはゆかぬと思うのだが…………。攻撃を防ぐのとはわけが違うと思うのだがなあ」
さすが世界随一の防御力の持ち主。不屈の闘志もさすがですわ。
ちなみに、一般的に8メートルの高所から落下すると人間はほぼ死ぬと言われている。100メートルの高さから落ちたなら、いくら鉄壁の魔法を使ったとしても無事ではすまない。普通は。




