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異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 22

 ナイスタイミングとはこのことで、ローザさんがローズシロップを使ったローズウォーターを持ってきてくれた。


「ご苦労様。ローズウォーターをどうぞ。お菓子がないのが少し寂しいけど」

「お菓子ならあるよー!」


 どこからともなく元気な声が聞こえた。

 吹き抜けの中庭の空から小さな光が舞い降りる。

 ローザさんめがけてバニラのフェアリーが輝いた。


「バーニア! おはよう。今日は一人なんだね」

「うん! 風に乗ってふわふわしてたらローザたちが見えたから降りてきたの。クッキーならいっぱいあるよ。食べる?」

「食べる! それじゃ、わたしからはローズウォーターをあげるね」

「ローズウォーター! ありがとうっ!」


 クッキーと交換でローズウォーターを渡す。

 フェアリーたちはなにかしてもらった時のお礼の品として、ドライフルーツやクッキーを常にたくさん用意してるらしい。さくさくの紅茶クッキーを一人に二つ分けてもらい、バーニアにはローズウォーターをあげる。

 バーニアはまぁるい水滴のようにローズウォーターを集め、宙に浮いた水玉を吸うように飲んだ。


「冷たくっておいしい! とっても甘くておいしい! バラの香りが素敵! ローザ、ありがとうっ!」

「どういたしまして。バーニアがくれた紅茶クッキーもとってもおいしいね。紅茶クッキーはみんなで作ったの?」

「うん。紅茶だったり、ハーブだったり、果物だったり、いろんなものをクッキーにまぜまぜするの。もちろん、バニラビーンズを使ったクッキーもあるよ。最近は焼き芋だったりかぼちゃだったり、秋の味覚が楽しめるクッキーを作ってるの」

「おぉー! いろんな味があって楽しいね。メリアローザは作物がたんまりあるから、どれをクッキーに使おうか悩んじゃいそう」

「そう! そうなの! 栗もあるしー、紅葉の実を使ったクッキーもおいしいしー、来月くらいにはわさびが旬になるから、わさびを使ったクッキーも食べたいなー♪」

「わ、わさび……本当に、いろんなクッキーを作るんだね」

「ふふふ♪ 毎日毎日、明日が待ち遠しくってわっくわくだなー♪」


 今が素敵で、明日が煌めくと信じて疑わないバーニアは頬を染めて宙をくるくると舞う。

 羨ましいほどに輝いて、憧れるほどに天衣無縫。見てるだけでふわふわしてしまう。

 これがフェアリー。全人類が夢幻に求める理想の姿。毎日毎日飽きなくて。見るたび見るたび新しい表情を見せてくれる。

 こんなに幸せな時間が続くなら、メリアローザに移住してもいいかもしれない。


「えいっ♪」

「えい?」


 私の耳元であどけない少女の声が聞こえた。赤色の短い髪を揺らしてほぼゼロ距離で近づき、私の右腕を持ち上げる。

 持ち上げて、注射器を刺した。

 スライムが作り出す疑似チューブの中を鮮血が流れる。ラブラードの中へ向かって走り出した。


 血を抜かれてるッ!?

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