異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 21
ネイサン女医がスライムに命令して疑似輸血管を生成。ラブラードとニャニャ先輩の血管を繋ぐ。
スライムがニャニャ先輩の静脈を探し、にょいっと皮膚に侵入。ゆっくりゆっくりと血が注がれた。採血した分の全てを戻し終えると、ニャニャ先輩の血色がすっかりよくなり、ブラードさんは号泣して身を崩す。
そんなに血が欲しいんですか……?
「うっ……うぅっ…………上質な、上質な恋バナを血液ちゃんから聞けると、思ったのにぃ…………」
本人から聞けばよいのでは……?
それはともかく、スライムが静脈に疑似血管を刺した跡がまったくない。調べてみると、細胞レベルで修復されて、文字通り跡形もなく元通りになってる。細菌や雑菌の侵入もない。
野戦ではどうしても不衛生な環境で医療行為を行わなくてはならないことがある。スライムがいれば、安全かつ健全な輸血が可能かもしれない。
マジックアイテムも見逃せない。清潔な血を保存して輸送、輸血できる。ケースバイケースとはいえ、これは我々の世界にはなく、欲しいと思っても実現しなかった技術。
ニャニャ先輩には悪いけど、知的好奇心が満たされたので満足です。
さて、切り替えていきましょう。輸血が完了したとはいえ、メンタルも魔力も体力もすり減った患者さんがいきなり元気はつらつになるわけではない。
ニャニャ先輩を手術台から下ろし、病院の中庭へ退避。新鮮な空気と整えられたバラ園の中で気持ちを落ち着かせてもらいましょう。
「ニャニャ先輩、大丈夫ですか?」
「にゃぁ……少し気分がよくなってきた、と思う。多分」
「無事でなによりです。でも今日はドラゴンブレスの習得のために、アルマさんたちと一緒にドラゴンライドに行ったんですよね? なんでこんなに消耗してるんですか?」
「うぐっ!? それは……」
「それは?」
ニャニャ先輩は口ごもんでうつむいた。何か問題でも起きたのか。
先輩のことだからきっと、熱を入れすぎて魔法を放ちすぎたのだろう。勉強熱心な先輩らしいです。
だから今日は魔法のことを忘れてゆっくりしていただきたい。




