異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 19
普通なら微妙な空気になるところ。だけどここはメリアローザ王立病院。こんなことは日常茶飯事。なにごともなかったかのように会話が始まる。
沈黙を気にせず、ローザさんが切り出した。
「できればスライムを使った施術を見たいのですが、今日は手術の予定はありますか?」
「残念ながら、今日も病院は暇ね。入院してる患者もほとんどいないし。みんな、健康でなによりだわ……」
ネイサン女医も落胆を隠さない。
そんなに手術がしたいのか。
ローザさんは息をするように気にしない。
「国のみんなが健康なのは素晴らしいことですね。病院の、みなさんのおかげで健康意識が高まったということですね」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。あ、そうだ。手術ってわけじゃないけど、今しがた新しい患者さんができたの。その患者さんの了解がもらえれば、スライムを使った施術自体は見られると思うけど、交渉してみる?」
「ぜひっ!」
今、なんか、患者を人工的に作ったみたいな言い方だったように聞こえたんですけど……。
怖いので気のせいだと思い込もう。
手術室に移動する中で、ローザさんは積極的にネイサン女医に話しかける。
「患者さんはどんなご病気なんですか?」
「病気じゃないわ。いたって健康体よ。だけど、献血の時に血を抜きすぎてしまったみたいで、輸血しようかって話しになったみたいなの」
「なるほど。スライムを輸血管の代替にするんですか?」
「そんなところね。ほかにもいろいろと使い方はあるけど、暴れなければすぐに済むわ」
暴れなければ!?
いちいち不穏ワードが飛び出てくるのはやめていただきたい。




