異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 18
スライムを調教する人って、多分十中八九変態だと思うんだけど。
それはさておき、スライムの有用性は理解した。ので、そろそろお暇させていただきたい。
ここに長居をするのはあまりよろしくない気がする。
私の気持ちを知ってか知らずか、ローザさんはラララさんに言い放つ。
「次はどちらを見せていただけるのでしょうか?」
「そうねえ。ネイサンさんのところへ行ってみましょうか。レベッカちゃんも一緒にいると思うわ」
「ぜひっ!」
ネイサン女医。たしか、癌摘出のスペシャリスト。趣味はギターだったっけ。音を奏でることで傷を癒すミュージックヒーラー。せめて施術で開けた切開部分は施術で塞いで欲しいけど……。
ネイサン女医に連絡がついたのでラララさんの後ろをついていく。到着した場所はスタッフの休憩所。扉を開けると、いかにもできる女という雰囲気の女性と、娘であろう少女が白衣を着て一緒に本を読んでいる。
扉を開けて、私たちに気づいた少女が振り返る。
「あ、ローザさんだ。相変わらず綺麗だねっ!」
「うん、ありがとう。彼女は初めましてだよね。リリィ・ポレダっていうの。彼女もわたしと同じ、医療術者志望なの」
紹介されて、初めましての挨拶をする。
「初めまして、リリィ・ポレダです。今日は病院を見学させていただいております」
挨拶をして、ネイサンさんが小さく笑って返事をした。
「話しは聞いてるよ。ローザと同じで異世界から来たんだよね。私は異世界の医療がどんなものかは知らないけれど、なにかを学び取ってもらえると嬉しいよ。私たちにできることがあれば、遠慮なく申し出てほしい。最大限、協力するよ」
「ありがとうございますっ!」
「さて、手始めにレベッカ、彼女はどうかな?」
ネイサン女医が娘を私に差し向けた。
これが噂の癌告知。めちゃくちゃドキドキする。悪い意味で!
「はぁー……健康に気を遣った、すごく綺麗な体ですね……」
「え、あ、うん。ありがとう……」
褒められてるのか、貶されてるのかわからない。
なにを隠そうレベッカ・マーリンド。お母さんが大好き。そのお母さんが大好きなのは癌の摘出手術。母を喜ばせるためには癌患者を見つけなくてはならない。だから相手が癌患者でなかった時、母を喜ばせられないと思って落胆してしまうのだ。




