異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 16
ブラードさんは採血をする時のように肘の裏側をこすって怒張させ、血管を浮き出させる。血管を見たブラードさんは嬉しそうに微笑んで耳を傾けた。血液に……。
「ふむふむ。なるほどなるほど。今日はスライムを使った施術が見たいんですね。あとは医療用のマジックアイテムや設備を見学してみたい、と。分かりました。そういうことでしたら、患者を見繕って手術しましょう」
「この人、さっきからなに言ってんですか!?」
患者を見繕って手術するって、医療従事者からは絶対に出てこないことを平気で口にしてるんですけど!
本当に看護師ですか!?
ただのマッドナースなのでは!?
あとなんで血液と会話してるの!?
つっこみどころが多すぎて、思ったことが喉で渋滞して言葉にならなかった。
ローザさんの血液との会話が終わったブラードさんの次の標的は私だ。
郷に入りては郷に……今回ばかりは従いたくはない。従いたくはないが、従わざるをえない。
腕を掴まれてこすられて、ブラードさんは私の血液に耳を傾ける。
「ふむふむ。目的はローザさんと同じく、スライムを使った施術の見学ですね。片想いの相手がいらっしゃる。恋敵が親友や先輩。4人もいらっしゃるとは、これはたいへんな恋路になりそうですね」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああッ!?」
「病院で大きな声を出してはいけませんよお~♪」
「なんで、なんでそんなことが分かるんですかッ!?」
「それはもちろん、血液ちゃんたちに聞いたからですよ。とっても健康的でさらさらの血液ちゃんたちですね。やっぱり献血していただかなくては……じゅるり」
「ブラード、そのへんにしておきなさい。ごめんなさいね。看護師としては優秀なんだけど」
看護師として優秀以前に人としてどうかと思いますけど!?
というのは私の社会人的モラルが邪魔をして口には出なかった。
とにかく、彼女とはあまり一緒にいたくない。余計なことを血液から聞き出されては困る。
ここは早くラララさんに病院の案内をしてもらわなくてはならない。
私たちは逃げるようにラララさんを連れ出して病院の案内をしてもらう。
「こちらがスライムの保育所です」
「スライムの保育所!?」
もうずっとつっこみっぱなしである。しょうがないじゃない。『スライムの保育所』ってなんだって話しじゃん。




