異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 7
メリアローザの冒険者は、いったいどんな強さなのか。末恐ろしいとはこのことよ。
ひとまず、今はドラゴンブレスの構成を抽出しよう。アルマが発動させた魔法は二つ。口から火を吹く【ファイヤーブレス】。両の翼から暴風を発生させる【エアロストーム】。二つの魔法を組み合わせて燃焼を加速。超高温の炎をまき散らす。
何度か練習して、必ず体得してみせる。
「よぉし。それではさっそくぶっぱなすです」
「ぶっぱなそう……アルマが言えた義理ではありませんが、お手柔らかに」
いかん。アルマにつられてアルマっぽい言葉を使ってしまった。
微妙な沈黙の中、なにごともなかったかのようにドラゴンに飛び乗って空を睨む。
まずはファイヤーブレスを発動。同時にエアロストームをぶつけて燃焼を加速。赤色の炎が青色の炎に変わった。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああッ!?」
途端、とんでもない悲鳴が聞こえた。
天を割くほどの絶叫が空に響く。感覚からして、ドラゴンブレスが何かにぶつかった。空に放ったはずなのに……?
この展開、前にも見たことあるような…………。
サマーバケーションの時、アルマが天に放った魔法が天使に当たって撃墜した。そんなデジャブを感じて、そんなデジャブあるか!? と疑問に思う。なにかの間違いか空耳と思ってドラゴンブレスを止めてみると、空を飛んでいたらしい謎の生物が丸焦げになって地に落ちた。
マジか…………。
「なんかこの光景、見たことあるんですけど……」
アルマが後悔の過去を思い出して青ざめる。
「とりあえず、まぁ、人命救助に行こうか。なければ証拠隠滅」
なんかペーシェが物騒なことを言った気がする。
「いいから早く助けなきゃ!」
常識人のベレッタさんが常識的な見識を示して要救助者へと走って行く。
「ちょっと待ってくださーい!」
どこからか中年っぽい男性の声が聞こえた。森の中から太郎と呼ばれる中年だか老齢だかよく分からない人物が現れる。続いて三色髪のすみれも現れた。
人命救助に待ったをかけるとは、いったいどういうことなのか。
それと、太郎さんの背後に尻尾が2本ある狐と、空中に浮遊する半透明のタペストリーがいる。
すみれの周囲にはカラフルに光る光の玉がある。
なんだか分からないが、とにかく彼の話しを聞こう。
「火柱にぶつかったのは私が使役する式神【天鬼童子】の祈です。普段は温厚な性格ですが、過剰なストレスを受けると暴走してしまうのです」
「えっ、あの真っ黒いのが祈なの!?」




