異世界旅行2-5 旬には少し早すぎて、だから今から待ち遠しくて 5
どすんどすん。
ばさーっ。ばささーっ。
日常には存在しない力強い音が鳴り響く。
眼前には二頭のドラゴン。赤と白の鱗が輝く天空の支配者。
アルマが赤いドラゴン。ベレッタさんが白いドラゴンに乗って空を自由に舞う。
彼女たちはモンスターカーレースの妨害要員として活躍するため、これからしばらくの間、ドラゴンを操る練習にいそしむことになる。
「いいなー。あたしもドラゴンに乗ってモンスターカーを追い回したいなー」
聞き間違いか。『ドラゴンに乗りたい』ではなくて、『ドラゴンに乗ってンスターカーを追い回したい』って聞こえた気がする。
もしかして、ペーシェってかなりヤバい人?
いやいや、アダムの姉がヤバい人なわけがない。サマーバケーションの時だって、率先して幽霊を見つけるマーガレットの護衛をした。義理人情の人なのだ。
聞き間違いと思って彼女の言葉をスルーしよう。
「ドラゴンに乗って空を飛ぶのは格別の体験です。ペーシェはどうだったです?」
例に漏れず髪の毛がバサーってなって逆立ってる。全力で空の旅を堪能したらしい。
彼女は気持ちのいい笑顔でサムズアップする。
「さいっこーーーに楽しかった! こんなんグレンツェンに持って行ったら秒で人気者になるわ!」
「ですね。ドラゴンはみんなの憧れです。火力も半端じゃないです。シェリー騎士団長の全力のストーンウォールを溶かしてしまったです」
「え、マジで? それは凄い……。さすがドラゴンと言ったところか」
そう。本当に凄かった。あの火力があれば、多くの魔獣を一掃できるに違いない。
ドラゴンを手に入れることはできない。だけど、ドラゴンが放出した魔法を模倣するくらいはできるかもしれない。
体得したい。今日ここにいるのはそのためだ。




