異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 45
完璧な技を繰り出しながら、暁は思い出したように新規参戦した3人に言った。
「あ、そうそう。ペーシェとローザとシルヴァも自由に街を歩いてくれて構わないからな。あたしの財布を食いつくすつもりで楽しんでくれて構わないぞ♪」
「あ、ありがとうございます……。あたしはとりあえず、ドラゴンに興味があるのでアルマとベレッタさんと一緒に行動しようと思います」
「ドラゴンに乗って空を飛ぶのは最高に楽しいぞ! でもドラゴンブレスを吹くのはやめておけ!」
「うぎゃああああああああああああああああああああッ!」
アルマが叫ぶ。後悔と反省に身を捩って体がへんな方向に曲がりくねった。
「ローザはヘラさんと一緒に観光か?」
双子を妹にしたいと抵抗する姫様を暁が逆エビ固めにして質問した。
「えっと……明日はリリィと一緒に病院見学に行こうと思ってます。まだまだ見たいところもありますし、できればスライムを使った施術が見たくって」
「そうか。二人は医療術者志望だもんな。スライムを使った施術となると手術になるな。どこかに癌患者がいれば摘出手術の時にスライムを使った施術が見られるかもしれん。明日、定期健診の名目でネイサン女医とレベッカにエルドラドへの入場許可を出そう。新しく入った人たちの中に癌患者がいるかもしれん。運よく見つかれば、そのまま手術台行きだ。グッドラック!」
「「運よく…………?」」
医療術者志望のローザとリリィの疑問符が重なった。
癌患者が見つかることは運がいいことなのか?
そりゃ早期発見できれば運がいいんだけど。異世界独特の手術方法が見学できれば運がいいんだろうけど。
そもそも発癌してる時点で運がいいとは言えないのでは?
てか、スライムっているのか。スライムを使った施術ってなんだ。面白怖いなあ。
怖いと思った途端、インヴィディアさんが怖いことを言い出した。
「ネイサン女医と娘さんのレベッカちゃんね。癌狩りが始まるのか……」
「癌狩りってなんですか?」
思わず言葉に出てしまった。だって『癌狩り』ってなに? って話しでしょ。
インヴィディアさんが濁した言葉の真相を語る。
「ネイサン女医は癌手術のスペシャリストなの。できれば年に一度でいいからメドラウトに来てみんなを検診してほしいわ。娘さんのレベッカちゃんは癌を見ることができるの。レベッカちゃんが癌を見つけて、母親が治療する。っていう流れね」
「さ、最強じゃないですかっ!」
「でもやっぱり怖いのよ。突然、屈託のない笑顔で癌宣告されるし。癌治療が終わったら切開部分を閉じる前にネイサン女医が爆音でギターを弾き始めるし」
「前者はともかく、後者はどういう状況なんですか?」
インヴィディアさんが答えるより先に、リリス姫にコブラツイストをかます暁が詳細な情報を提供してくれる。
「ネイサン女医のユニークスキルです。ネイサン女医が奏でる音楽を聞いた人の傷を修復するという魔法です」
傷口を修復する魔法と聞いたリリィが納得の表情で暁に笑顔を向けた。
「それで切開部分を治療するわけですね。術式や術後のクオリティは患者さんの体力に影響しますから。より負担が少なく素早い施術であれば、入院生活を短くできますし、社会復帰も早まりますから」
「いや、ネイサン女医曰く、『癌のぷるぷるした黒い塊を見ると無性に興奮して、音楽で興奮を表したくなる』だそうだ。趣味だな」
「oh……my god…………」
「あとちなみに、うるさすぎて患者の麻酔が切れて目覚めて、無影灯の鏡に反射した切開部分を見せられてテンションが下がるって話しだ。その間、医者はテンションマックスだけど」
「……………………どうしましょう。明日はなんだか、薔薇園でまったりティータイムを楽しみたい気分になってきました」
「わたしも…………」
変態すぎる。インヴィディアさんが、検診に来てほしいと言いながら落胆したような声色だったのはこれが原因か。
リリィもローザもテンションが死んだ。無理はしちゃダメよ?




