異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 44
「それにしても、用事があったから仕方ないとはいえ、やっぱりメリアローザの旅行は魅力的だなー。なんとか今日に間に合わせられたとはいえ、出遅れ感が半端ないわー。ドラゴンライドは明日に楽しめるとはいえ、エルドラドの宴会に水晶鉱床、秋の味覚食べ歩き、ピッツァの食べ放題、華恋が無茶ぶりしたっていう時計にも興味ある。面白いところ、だいぶ逃した感あるわー」
ペーシェの溜息にミレナさんが即反応。
「華恋ご依頼の時計が完成したら、設計図を譲ってくれるってことだからステラで作って売るつもりだよ。ペーシェがその気なら買ってみる?」
「おいくら万ピノですか?」
「そうだね、宝飾抜きでも1000万ピノは超えるかな。でもマジで超かっこいいよ!」
「見るだけにしときまーす……」
言葉を小さくして、ペーシェは枕をそっとシルヴァの膝元に置いた。
「しれっと置いてきたね。私はやっぱり秋のスイーツです。紅葉饅頭もそうですが、ペーシェの作ってくれた秋の果実を使ったタルトタタンは絶品だった。というわけで、うちで働いてもらいましょうか」
「まだ言いますか……。作り方を教えたんですから、それでいいじゃないですか」
「それなんだけど、何回やっても微妙に違うのよ。私はペーシェのタルトタタンをショコラに並べたい!」
「ぐぬぬ~~~~っ! 求めてくれるのは嬉しいけど、パティシエになるつもりはないんだよな~~~~っ! 友達としてなら全然作るんですけどぉ……」
と、ペーシェは悩みながらシルヴァから枕を奪って放り投げる。話題をぶった切ることに躊躇がない。
放り投げた枕はどこへ行くのか。円陣を組んだ私たちの真ん中に落ちようとする。落ちるより早く、リリス姫様が猟犬のように飛び出した。
フリスビーをナイスキャッチするわんちゃんのようにダイビングキャッチして布団の海にダイブする。
なにかをやり遂げたすがすがしい笑顔を向けて明日の予定を確認する。
「すみれさんは朝一で太郎さんと肉霊芝探し。ラムさんたちはロリムちゃんと一緒に街歩き。シェリーさんたち騎士団長クラスは魔剣の性能テストやら、冒険者と一緒にモンスター狩り。アルマちゃんとベレッタさんはドラゴンライドの訓練。私はキキちゃんとヤヤちゃんを養子に。ペーシェさんはドラゴンライドに参戦ですよね。ほかのみなさんのご予定はどうなってますか?」
「おいちょっとリリス姫がなに言ってんのかかなりよくわからないんだけどおーッ!?」
リリス姫がしれっと欲望を吐露したところで暁が登場。計ったかのようなタイミングで寝間着姿の暁が枕を抱えてやってきた。
扉を開けると同時にリリス姫に枕をぶん投げる。
「うわおあーーーーっ! 仮にもお姫様に枕を投げるだなんてひどいですっ!」
「寝間着のお姫様なんているかーーーーっ!」
「いますよここにッ!」
「知るかーーーーッ! キキもヤヤも誰にもやらんぞッ!」
「うぎゃああああああああああああああああああああッ!」
暁は酔ってるのか、キレてるのか、あるいは両方か。天然物のお姫様に腕肘十文字固めをきめる。マジか…………。お姫様が腕肘十文字固めを食らってるんですけど。




