異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 43
「アーディの頭に乗った金ぴかの昆虫はなんだったんだ?」
え、気になるところ、そこなの?
誰も説明できない謎ポイントに、ここは仕方ないとアルマが手を挙げて答える。
「昆虫に限らず時々、色素の薄い動物が現れるんです。ひじょうに珍しい個体でして、見つけると幸運がやってくるとか、なんかそんな言い伝え的なやつがあるんです。子供はそういうの好きですから」
「ほう、ということは先刻の童は幸運を掴んだということか。それは良いことだのう。ずいぶんと大声で泣いていたものだから心配していたが、良いことがあったならよかった」
「そういうことです。アーディさんはやや不幸気味でしたけど」
納得と安堵の溜息をついて、猫の神はプリマをなでなでしたまま動かない。枕ゲームがなんなのか分かってない様子なので、アルマが枕を拾って久しぶりのメリアローザを反芻する。
「紅葉饅頭は相変わらずのおいしさでした。でもグレンツェン側の世界のように精練された材料ではなく、天然素材をそのまま使ったものばかりでしたので、みなさんにはちょっと癖があったんじゃないでしょうか。どうしよっかなー。誰に投げよっかなー。リリィに聞いてみるか。えいっ!」
「わわっ! えっと、最初は青臭かったりするのかなーって思ってたけど、食べてみると全然そんなことなくて本当においしかったです。しっかりと下処理をしたものだったからなのでしょうが、スイーツもご飯も本当においしいものばかりで驚きました。ニャニャ先輩はどうでしたか?」
「ニャニャも大満足なのです。紅葉饅頭もお団子も、焼き芋も最高です。特に、今日はカラフルな睡蓮を眺めながらのティーパーティーでした。あれほどの静謐な極彩色はなかなか見られないです」
思い出すとうっとりと溜息が漏れてしまう。
水面に浮かぶ極彩色の睡蓮。テーブルにはおいしいスイーツ。そしてかわいらしく秋の風に舞うフェアリー。全てが充足。全てが完璧な時間だった。
ほんわかするニャニャの手からローザが枕をひっこ抜く。
「睡蓮もいいけど、春になったらメリアローザ中のバラが一斉に咲き誇る。春のメリアローザでティーパーティーがしたーい! バラと言えば、青色のバラ。ドラゴンズブルーファイヤー。あれ、グレンツェン側の世界で株を増やしていいのかな?」
彼女の疑問にヘラさんが答える。
「いいんじゃない? もともとはホワイトローズだったって話しだし。一応、検査にかけて毒性がないかだけ調べてみれば。まぁ、毒を持つバラなんて聞いたことないけど」
「ローザと違って」
「うっさい!」
ペーシェがいらんこと言ったのでローザが思いっきり枕をぶん投げた。
投げられることが分かってるペーシェはナイスキャッチしてほくそ笑む。




