異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 42
「ほかに印象に残ったことってある?」
「お鍋が全部おいしかったです。トリュフ入りの鹿肉ステーキも、最後のおじやも絶品でした! お昼に食べた秋野菜をたっぷり使ったボロネーゼは自分でも作ってみたいですっ!」
「さすが、すみれ。花より団子と秋の味覚」
そういう私も花より団子。枕をすみれから譲ってもらう。
「個人的にはやっぱり黒トリュフかな。お土産にいっぱいくれるって暁が言ってくれたし、マジですみれ、ファインプレー!」
「いえ~い♪」
すみれとハイタッチした隙に枕を奪われた。意外にもインヴィディアさんが言葉を繋げる。
「紅葉饅頭もおいしかったのだけれど、ティーパーティーの時に食べさせてもらったタルトタタンというスイーツが本当においしかったわ。シルヴァちゃんとペーシェちゃんはパティシエなのよね。よかったらいつか、近いうちにメドラウトに来て私の教え子たちにスイーツを教えてもらえないかしら?」
これにペーシェが異を唱える。
「それは構いませんが、あたしはパティシエではありません」
「あら、そうなの?」
「パティシエはシルヴァさんです。でもメドラウトには興味があるので、誘っていただけると嬉しいです」
「ええ、もちろんよ。みんなにも声をかけてね。いろんな人たちと交流できるのは、貴方たちにも、教え子たちにとってもかけがえのない財産になるだろうから」
全員が肯定して、スイーツ好きのシルヴァがインヴィディアさんに、パティシエとしての当然の質問を繰り出す。
「メドラウトにはどんなスイーツがあるんですか?」
「豆を使った焼き菓子と、果物が豊富に採れるからフルーツを使った飲み物やスイーツが多いわね。それと、チョコレートを使ったものが大半かな」
インヴィディアさんが言葉を終えたことを確認して、ハーブが大好きなクラリスが前に出る。
「これからの主流はハーブを使ったスイーツですっ!」
「うふふ♪ そうね。クラリスはハーブが大好きだものね。楽しみにしてるわ♪」
「もちろんです。コーヒーには負けませんっ!」
決意を新たするクラリスを前に、インヴィディアさんが余計なひと言を添える。
「そういえば、コーヒー豆を粉状にしてクリームに振りかけたサンドクッキーは絶品だったわね♪」
「インヴィディアさん、枕を失礼します」
コーヒー談義を遮ろうと、彼女の膝に置かれた枕をクラリスが奪い取って投げ捨てた。
無造作に放り投げられた枕はバストさんの足元に転がる。




