異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 41
「枕投げをしましょうっ!」
「ダメです。いったいどこからそんな情報を仕入れてきたんですか?」
シャルロッテ姫様のテンションをシェリー騎士団長がぶった切る。
防御専門のシェリーさんが珍しく攻撃に転じた。
「貴女のことですから、枕を思いっきりぶん投げてテラスから外に吹っ飛ばしたり、壁とか花瓶とか襖とか障子とか、なにもかも壊しそうなのでダメです。おとなしくしていてください」
「では、おとなしく枕投げをします」
「飛距離は手元から半径1メートル以内。時速5キロ以下にしてください」
こ、細けぇッ!
「それではさっそく、わたくしが投げた枕を受け取った人とお話しをしようと思います。それっ!」
大広間に広がる布団には、今にも寝ようとする我々が座る。そこにいきなり突然のキラーパス。文字通りのキラーパスを受けとったのはベレッタ・シルヴィア。
驚きとともに姫様の考えに沿おうと今日の思い出を振り返る。
彼女の言葉を聞こうと全員が彼女を見た。
「そ、そうですね。やっぱりわたしはドラゴンライドでしょうか。白い龍に乗ってふわりと空に浮かんで、自由に空を飛んで、本当に楽しかったです」
「もっともっとドラゴンに乗って空を飛びたいですよねっ! ベルンの街を、グレンツェンを、空から眺めてみたいですっ! ね、ヘラさん!」
シャルロッテ姫様が、『ベルンとグレンツェンの空を早く飛びたい!』と催促する。
ヘラさんも彼女と同じ気持ち。
「ええ、ドラゴンでグレンツェンとベルンの空を、世界中の空を見てみたいわっ!」
「世界中の空っ! はわわぁ~~~~っ!」
ドラゴンに乗って世界中の空を堪能する。そんなことができたなら、どんなに素敵なことだろう。
ベレッタはシャルロッテ姫様を見て、軽く枕を宙に投げる。
次に受け取ったのは小鳥遊すみれ。彼女の頭は明日のキノコ狩りのことでいっぱい。
「黒トリュフも霊芝も最高です。紅葉狩りの時に見つけた栗もキノコたちもとってもおいしかったです。秋はおいしいがてんこ盛りです。エルドラドも最高でした。明日は肉霊芝探しです。胸がトキメキますねっ!」
「キノコ探しで胸がトキめけるのは……すみれだけなんじゃないか…………?」
「えっ?」
なにか言った? という表情だ。
すみれはきょとんとした顔を私に見せた。
このままでは永遠にキノコ談義が始まるかもしれない。彼女の頭の疑問符が残るうちに話題を変えよう。




