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異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 36

 我々と面識がなく、歓迎されたとはいえ宴の部外者の自分が参加しては、他の人たちの気分を害するかもしれないと背中を見せた。

 空気感でそうと分かってはいても、太郎さんを慕う人々はがっかりと肩を落とす。


「太郎さんだったら大歓迎だったのになー。それで、これが不老長寿の霊薬の材料なの? てか、どう見てもキノコに見えないんだけど……」


 もみじの疑問に暁が口を滑らせかける。


「それを言ったらトリュフだって、うん…………黒い塊にしか見えん。世の中には不思議なものがまだまだいっぱいあるなー」

「そうは言っても、目の前にある肉霊芝、だっけ? これは異様すぎるでしょ」


 立方体の白い塊。どう見てもキノコではない。

 1000年の時を生きるインヴィディアさんでさえ初めて見るらしい。

 興奮気味のすみれに肉霊芝がなんたるかを聞いてみよう。


「これってそんなにすごいの?」

「それはもう、すごいなんてもんじゃないですよ! 肉霊芝は細菌、真菌、粘菌の三種類が同時に集まってできた奇跡の産物なのですっ!」

「え、菌類の塊ってこと?」


 華恋の指摘をすみれが肯定する。


「そう! 奇跡の産物ですっ! ちなみに、こちらの肉霊芝は30キロくらいありそうですね。クオリティは分かりませんが、華国で見つかった肉霊芝を参考にすると、これひとつで250万ピノです!」

「「「「「250万!?」」」」」


 質素な生活をするならグレンツェンで1年以上は暮らせる額じゃん!

 そんなものをぽんとあげてしまうとは。太郎さん、後悔しないかなぁ……。


「ヘラさん。ひとまず、キノコを研究する教授さんに連絡して、グレンツェン大図書館に展示してみてはいかがでしょう。肉霊芝はまだまだ分からないことが多いおキノコ仙人様です。きっとなにかの役に立つと思います」

「本当にいいの? たしかに希少性で言えば博物館級だし、面白い題材だから多くの人たちの目に触れてほしいところだけど」

「もちろんですっ! 使用する分の霊芝はたくさんいただきましたので! 明日もたくさん採取してきます!」


 彼女の意気込みの先の未来を想像して、私はぽつりと呟く。


「あるだけ刈り取ってきそうだな……」


 私の心配が聞こえた暁が小さく苦笑いを作った。


「そこは太郎がなんとかするでしょう。それにしても本当に面白いキノコだ。これはどうやって食べるんだ?」

「これは煎じて飲むだけです。料理には使えません。味以前に超堅いらしいです。霊芝も同様です。乾燥させた霊芝は超堅いです。ハンマーを使わないといけないくらい堅いです」

「ハンマーで叩かないといけないくらい堅いのか。それはすごいな」


 興味を持った暁はすみれがライブラから取り出した霊芝を手に取って眺める。私も手に取って見てみよう。てかてかしたキノコに見える。匂いは普通にキノコっぽい匂い。

 毒はないらしい。味が気になるが食用じゃないので口に入れるのはやめておこう。


「どんな味がするんだろう。ひと欠片いただきまーす」


 好奇心の塊が恐れることなく霊芝を口に放り込んだ!

 途端、もみじの顔にしわが刻まれる。


「に……苦い…………」

「良薬口苦し、ですね! 紅葉饅頭で口直ししましょう」

「うぐぅ…………」


 もみじはやってしまったと、涙を流して渋い顔をした。

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