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異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 35

 グレンツェン大図書館の居住権。本好きのアルマにこれほど魅力的な提案があるだろうか。夜更かしのし過ぎでぶっ倒れる未来が見える。

 これはいかん。場の空気をうやむやにしないと収拾がつかん。

 よし、話題をぶった切ろう。


「もみじは紅葉饅頭を作ってたよね。食後のお菓子で出してくれるんだよね?」

「そうそう。今年は完熟した紅葉の実の渋みが少ないうえに甘味が強くって、とーってもおいしい紅葉饅頭が作れたんだよねー。いっぱい作ったから、みんなで食べよう!」

「おやおや。おいしそうな紅葉饅頭ですね。秋が来た、って感じがしてよろしいですね」


 もみじが手作り紅葉饅頭をテーブルに用意すると同時に聞きなれない声が聞こえた。

 若いような年老いたような、どちらにしても貫禄を感じさせる男性の声色。

 振り向くと、ひとのよさそうな中年のような老人のような、年齢がよくわからない中年老人が巨大な風呂敷を持って現れた。

 彼を知る人々は声を揃えて挨拶をする。


「太郎さんじゃないですか! どうぞどうぞこっちに来て紅葉饅頭を食べて行ってくださいな」


 もみじは自分の席を譲るようにして立ち上がった。


「こんな時間に食事なんて珍しいですね。もっと早く来てくだされば宴会をご一緒できたのに」


 暁もウェルカムの構え。

 アルマも飛び上がって太郎さんの前で飛び跳ねる。


「お久しぶりですっ! そちらの風呂敷はなんですか? 新しいマジックアイテムですか!?」

「いえいえ。こちらはさきほど採取してきたおキノコ様です」

「おキノコ様!」


 おキノコ様。どこかで聞いた言葉だ。既視感を覚えると同時にすみれが飛びだした。


「むむむっ! この風呂敷からおキノコ仙人様の気配を感じますっ!」

「「「「「おキノコ仙人様!?」」」」」

「はい、なんとおキノコ仙人様が見つかりました!」

「なんとっ!」


 感動するすみれはのけ反り、後ずさり、両手を合わせて合掌。うやうやしくひれ伏しての合掌。

 それはいいんだけど、なんで【おキノコ仙人様】で話しが通じるわけ?

 異世界間の共通語なの?


 それにしても奇妙だ。キノコって言うわりには、風呂敷の形が立方体なんだが。わざわざ箱に入れて持ってきたのか?

 みんなの前で開けてみると、あらびっくり。キノコではなく、巨大な脂肪の塊ではないか。

 どういうこと?

 疑問符を浮かべる我々のために、太郎さんが説明をしてくれる。


「こちらは肉霊芝と呼ばれていまして、不老長寿の霊薬として有名なのです。実際には霊薬というよりは、体を健康に保つことのできる成分が多量に含まれてるわけですが。なんにしても、私も肉霊芝を採取したのは長い人生で3回だけです。ずっと探してたんですが、ようやく見つかりましたね」

「おぉ~っ! 私は実物を見るのは初めてです! それにしても、3回も採取したことがあるなんてすごい!」

「いやまぁ、たまたま見つけただけですよ。そうだ。明日、もしもお時間があれば肉霊芝の探索に行きませんか。霊芝を発見したのはすみれさんという話しですので、ご興味があれば」

「行きますっ!」


 すみれ、即答である。

 しかし長い人生で3回しか見つけられなかったということは、明日の探索で見つけられない可能性大なのでは?


 素直な疑問をぶつけてみると、意外というか、異世界ならではというか、驚きの言葉が飛び出してきた。


「今日もそうなんですが、式神を使って探させました。それにアリメラは植物採取が行われていない階層です。ということは長い月日、人間に踏み込まれていない場所が多く、たくさんの霊芝が自生している。肉霊芝がある可能性はとても高い。現にひとつ見つけました。探索範囲を広げればもっと多くの肉霊芝を見つけることができるかもしれません」

「私も小精霊さんに手伝ってもらいますっ! 天然の肉霊芝をこの目で拝んで採取してみたいですっ!」

「それでは明日の朝、食堂で集合ということで。それと、こちらはすみれさんへプレゼントします。霊芝の群生地を見つけてくださったお礼です」

「えっ!? 本当にいいんですか!?」

「もちろんですとも。その代わり、明日、別の肉霊芝を見つけたら半分頂けると助かります」

「それはもう、もちろんです! ありがとうございます!」


 深々とお礼をされた太郎さんは紅葉饅頭を3つだけ懐へ仕舞い、『明日の探索のための準備があるので』と言って足早に去ってしまう。

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