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異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 32

 思わず突っ込んだのはアルマの正面に座る胴着姿の少年。もみじと同じ道場の門下生。彼が素っ頓狂な声をあげるものだから、アルマの眉間にしわが寄る。


「なんですか、稲蔵(いなぞう)さん。モツ鍋でフグをしゃぶしゃぶしたら絶対おいしいですって!」

「いやぁーそれはないだろー。フグの身は淡泊な味なんだから、てっちりか、せめてキノコでしゃぶしゃぶがマストだろー。モツ鍋でフグしゃぶしゃぶはないわー」

「ふふんっ! 稲蔵さんにはモツ鍋の素晴らしさと万能感は理解できないんですよ。残念ですねー。ね、ベレッタさん?」


 アルマがナチュラルにベレッタにキラーパス!

 彼女はどう返すんだ?


「え? うん。モツ鍋はとってもおいしいね。でも、さすがにモツばっかりは味が濃いから、わたしはキノコ鍋があっさりしていて嬉しいな」

「ほらっ! ベレッタさんだってモツ鍋でフグをしゃぶしゃぶしたいって言ってるじゃないですか!」

「えっ!? そんなこと言ったか!?」


 アルマの耳には聞こえたい言葉しか聞こえないようだ。

 ベレッタもベレッタで基本的にアルマを全肯定なので異を唱えない。彼女の言われるまま、モツ鍋でフグをしゃぶしゃぶした。

 フグをしゃぶしゃぶするベレッタを横目で見る影がある。もみじがなにか言いたそうだ。


「鹿やタヌキはダメで、なんでフグはいいわけ……?」

「……………………」


 ベレッタはもみじから視線を逸らして沈黙を守る。

 弱肉強食の世界には獲物に感情移入する習慣などない。殺して食べるか、生かして狩猟の手伝いをさせるか。二者択一である。


 ベレッタに話しを振ると、もみじがつっこんできそうだからやめておこう。隣でフグ刺しをおいしそうに咀嚼する華恋に的を絞ろう。


「華恋はミレナさんに時計の相談依頼をしたって聞いたけど、それはもう終わったの?」


 そう聞くと、彼女は咀嚼していたフグ刺しを一気に飲み込んで振り返る。


「それはもうすっごく素敵な時計のデザインができあがりましたっ! ギベオンですよ、ギベオン! 置時計もオリジナルのデザインで作ってもらえることになって、めちゃくちゃかっこいいんですよっ!」


 声を大にする華恋の期待に水を差すように、ミレナさんが立ち上がって待ったをかけた。


「まだデザイン段階で、完成できるかどうか分からないよ? 模型は木製だったから、鉄で作った時にどうなるかまだ未知数だから。体積も質量も違うからね。可能な限り努力はするけど、まだ完成したわけじゃないから」

「ミレナさんがそこまで言う置時計ってどんなデザインなのか興味ある。デッサンとかある?」

「模型が手元にあるから見る? ものすんんんごいよ」


 ものすんんんごいと言われると余計に気になる。

 手渡された模型は円盤がたくさんひっついた謎の物体。魔力を流すと魔術回路が浮かび上がって動き出す。円盤の上に針がない。代わりに円盤から四角い突起物が飛び出しては引っ込み。飛び出しては引っ込みを繰り返す。


「小さくせわしなく動く突起が秒針。二つ目が長針。三つ目が短針です。自分でもなかなかのおしゃれ置時計だと思います!」

「なにこれめっちゃおしゃれ! 私もバルに欲しい!」

「さっそく発注が来ましたよ!」

「まだ完成してないんだが……」


 自分のデザインに自身満々の華恋とは対照的に、職人のミレナさんは皮算用は危険だと諭すも、彼女は視線を逸らして沈黙を守る。

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