異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 16
ヘラさんが子供たちのテンションに飛び込む。
「すごいっ! 全身金ぴかの金粉被りだわ! とってもすごいカブトムシを捕まえたね」
金粉被りとはこれいかに。ちょっとのぞいて見てわかった。本当に金ぴかのカブトムシだ。スプレーで塗装されたか、金箔を張られた造り物のような金ぴかのカブトムシ。虫にはあまり興味のない私も、これにはついつい見惚れてしまう。
「すっご。これってもしかして遺伝的に色素が変化した的なやつですか?」
「そうそう。体色変化のメカニズムはよく分かってないんだけど、超稀に体の一部が金色に輝くクワガタやカブトムシが見つかるの。でもここまで完璧に近い全身金粉被りのカブトムシは世界的に見ても超超超珍しいんじゃないかな。本当にすごいわ。しじまちゃん、ついてるね!」
「おぉ~! よし、こいつの名前はきんぴか丸だ! 家宝にしよう!」
「家宝にするのはいいけど、最期は標本にしてよ? バラバラになったらいけないから」
声に振り返るとポニテがかわいい少女と暁がいた。しじまちゃんが持つ金粉被りを見ようと、ポニテ少女と同じ袴を来た男子たちが群がる。
ポニテ少女は群がる男子に呆れて背を向け、異世界旅行組に相対した。
「はじめまして、秋紅もみじです。今回紅葉狩りの先導をいたします。みなさま、どうぞよろしくお願いします。ちなみに、こっちの男共はあたしと同じ道場の門下生で、こいつらも先導役です。山に深くは入りませんが、念のための護衛も兼ねてます」
護衛ということは、害獣が出るということか?
察して不安になる我々を安心させるために暁が一歩前へ出る。
「安心してください。若いですが、みな実力者です。カトブレパスの角を切って生還したのも彼らですから」
カトブレパスと言えば、昨日討伐したというすんごい強いらしいモンスター。これを聞いたシェリーさんは目を見開いて若人を見渡す。
「ベルン寄宿生と同じくらいの歳なのに、カトブレパスと戦って角を切ってくるとは。戦闘能力も生存能力もすごいな」
シェリーさんを見つけたもみじが親友の再来を確認する。
「シェリーさん、お久しぶりです。今回はアナスタシアはいないんですか?」
「残念ながら履修科目の都合で来てないよ。今度また、指南してもらえると嬉しいよ」
「お任せください! ボッキボキに鍛えてあげますよッ♪」
「ボッキボキ…………まぁ、死なない程度にシゴいてやってくれ」
シェリーさんともみじの話しの切れ目を縫って、紅葉狩りを待ち遠しくするすみれが前へ出た。
「それでそれで、紅葉狩りにはもう行くんですか? もうそろそろ行くんですか!?」
「ぐいぐい来るね~♪ そっちの準備ができてるなら、もう出発して大丈夫だよ。こっちはいつでも準備できるから。ところで、そこのお兄さんはずっと突っ立ってるけど何かあったの?」
「あ、それは…………」
ことの経緯を説明すると、しじまちゃんの姉のもみじがアーディに平謝り。しじまの頭を抑えて謝らせようとする。が、どういうわけか頭が下がらない。
「ぐっ! この! しじま! 失礼なことをしたらちゃんと謝りなさい!」
きちんとお姉ちゃんしてらっしゃる。しかし、姉の心、妹知らず。彼女はアーディを羨望のまなざしで見る。その間にももみじはしじまちゃんの頭を下げさせようと力づくで頭を抑えているはずなのに、全く1ミリも下がらない。
この妹、どんな筋力と体幹してんだ?
「しじま! ちゃんと謝りなさい!」
と、姉が言うと妹はさっきまで泣いていたことなど嘘のような笑顔でアーディを見上げる。
「殿!」
「「「「「殿ッ!?」」」」」




