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異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 15

 大親友のキキちゃんもヤヤちゃんも呆然として立ち尽くす。どうしようもない。勝負とは非情なもの。残念なことに、負けず嫌いのしじまちゃんにそれを言っても無駄。

 ここでヘラさんが颯爽かけつけ、しじまちゃんをよしよしし始める。


「今回は負けちゃったね~。でも大丈夫。松の葉はこーんなにいっぱいあるから、すっごく強い松の葉を一緒に探しましょう。次は絶対勝とうね!」

「ぐ、ぐううううう…………次は絶対に勝つ…………」


 さすがヘラさん。子供の立ち直らせ方がうまい。


「次に勝って、もし負けたとしても、最後に勝てば勝者よ!」


 ヘラさん、最後のひと言は蛇足では?

 松の葉を探し、根本のコブがめちゃくちゃ大きな松の葉を発見するなり泣き顔は吹き飛んで鼻息を荒くした。


「これで絶対に勝つ。連戦連勝するっ!」

「よし、これさえあればアーディお兄ちゃんに負けたりしないわ。こてんぱんにしちゃいなさい!」


 意気軒高とはこのことよ。

 アーディのほうはどうかな?

 なにやらベレッタが秘策を渡したようだ。


「いい? お義兄ちゃん。わたしが用意した松の葉は負けやすいように切れ込みを入れておいたから、これを使って必ず負けて。小さい子に大人げないことしないで」

「う、うん……ありがとう…………」


 不憫である。きっと彼だって勝ちたくて勝ったわけじゃないだろうに。大人げないことだってするつもりはなかっただろうに……。

 しじまちゃんもしじまちゃんで負けて悔しくて泣くにしても、さっきのは本気泣きしすぎだと思うのだが……。


 負けず嫌い、かつ、自尊心の強いしじまちゃんはアーディに負けまいと強い志を表すためか、椅子の上に立ってアーディを見下ろそうとする。

 この子の将来が心配になるなぁ……。


「「いざ、尋常に勝負!」」


 世紀の八百長試合が始まった。

 途端、アーディの頭の上になにかが落ちてきた。落葉美しい紅葉の葉が頭上に降りかかってきたのか。

 否。

 否!

 この時期には珍しいカブトムシである。

 これを見たしじまちゃんが絶句。手に持った最強の松の葉を自ら引きちぎり、叫ぶ。


「動いたら殺す!」

「え!? 動いたら殺されるの!?」


 急転直下の展開にアーディはついていけない。若くして魔導工学の第一人者となった彼も、幼い子供の衝動的な感情の変化に右往左往するほかない。

 動いたら殺されるみたいなので、彼は硬直したまま動かない。

 しじまちゃんはゆっくりゆっくり、名前の通り静かに手を伸ばしてカブトムシを捕まえた。

 捕まえたと同時に椅子から降りて双子に見せる。


「キキちゃんヤヤちゃん見てみて! でっかいカブトムシを捕まえた! しかも金粉被りだ。全身金粉被りのきんぴかカブトムシだ!」

「すごいっ! こんなに立派な金粉被りは見たことない! 早く虫かごに入れて、逃げないようにしなきゃ!」

「なんて見事な金粉被り! ところどころに色の変化があるところなんて荘厳で神々しい!」


 子供たちはおおはしゃぎ。

 いつ動いていいか分からないアーディは硬直したまま動かない。

 テンションのコントラストが面白くて笑ってしまう。

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