異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 13
まずは香り。なんといっても黒トリュフの魅力は香りにある。
芳醇で濃厚な森林の香り。それでいてニンニクなどのスパイスのような香りもする魅惑的で不思議なキノコ。生のトリュフは香りが強すぎて驚くけれど、どういうわけかそれが癖になる。
あつあつピッツァと秋野菜の味を引き立てるトリュフの相性は抜群。ヘイターハーゼでだってピッツァにトリュフをふんだんにかけて食べるなんてなかなかできるもんじゃない。
なんという贅沢。できれば黒トリュフをたくさん持って帰りたい。
さて、主観的な感想は当然激うまなのだけど、トリュフ初体験の人々の反応やいかに?
まずはインヴィディアさんを見てみよう。
「う~ん♪ 不思議な香りだけどとってもおいしいわ! どの食材もチーズとよく合う。やっぱり秋のメリアローザはなにを食べてもおいしくって憧れちゃうわ~♪」
よしっ!
彼女も黒トリュフの虜になってしまった。
セチアはどうだろうか?
「香りがすごいので味も強烈なのかと思ったら、味はとても控え目で食べやすいですね。こんなに素敵なキノコがあるだなんて思いもしませんでした」
セチアも喜んでくれたようだ。
ロリムのお口には合ったかな?
「もーぐもぐもぐもぐっ! もぐもぐもーぐもぐもぐっ!」
すごい勢いで咀嚼してる。嬉しそうにおいしそうに楽しそうに食べてるから気に入ってくれたに違いない。
さぁ問題のフェアリーたちは!?
初めての体験にわくわくする彼女たちは、自分たちのサイズに合ったピッツァを持ち上げ、チーズのとろーり感を楽しむ。
普段は人間の食事の端っこを分けっこしてもらって食べる彼女たちは、人間のようにひとつの料理を自分だけで食べるという習慣がない。だから人間っぽいことができて歓喜の絶頂。持ち上げては下ろし、チーズをびよーんびよんと伸ばして遊ぶ。
夢中になりすぎて食べることを忘れてしまう。夢中になる姿、マジフェアリー!
だけどさすがに冷めちゃいそう。
「ふっふっふ♪ 私たちが作った特製ピッツァは楽しんでもらえたかな?」
声をかけると、白雲が振り返って満面の笑みをみせてくれる。
「とっても素敵です! ピッツァのチーズがとろ~りして、とってもおいしそうです♪」
赤雷が白雲に続く。
「いままでにいろんなキノコを見てきましたが、トリュフは初めてのキノコです。とても香りが強くて素敵で、うっとりしてしまいます♪」
「よぉ~し、それじゃあ冷めないうちに食べちゃおう。食べたらきっともっと好きになると思うよ」
「「はいっ! それではいただきまーす!」」
ぱくり。もぐもぐ。ふわわぁ~♪
あまりのわくわくとおいしさのあまり、彼女たちが背負う羽が発光し、瞳は輝きを放ち、満開の笑顔が弾ける。
嗚呼、眼福とはまさにこのことよ。
ローズマリーはおいしすぎたせいか、驚きの表情を見せて硬直する。しかし背中の羽は太陽が如く眩しく輝く。
そして、両の手に掴んだピッツァを見て叫んだ。
「なんておいしいピッツァなんだあーーーーっ!」




