異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 12
厨房で一緒に料理をするのは旅仲間のすみれと、アルバイトで働くエレニツィカ。赤毛と高身長。健康的な小麦色の肌と張りのある声が印象的ななんでもできるガール。
すみれがエレニツィカとの思い出を振り返る。
「エレニツィカさんは養蜂場でも働いてましたよね。いろんなところでお仕事してるんですね」
「そうだよ。いろんな人と関わるのが好きで、いろんなところで働いてるよ。でも今日は急遽休みが出て、ヘルプで出たんだ。それより、今日採取した新種の食材ってのがこれだよね。独特のいい香りがする。すみれたちが住む世界で重宝されてるんだっけ?」
「はい、とっても貴重で高価な食材なんです。パスタやサラダ、肉料理、魚料理にも使われる素敵食材なんです。特に香りが素晴らしいのです」
「ぜひとも早く食べてみたいな。どういう段取りにする?」
「ボロネーゼの場合、トリュフはスライスしてそのまま料理にかけて使います。なので、ピッツァを作りたいです。トリュフ採取にフェアリーたちが頑張ってくれたので、フェアリーサイズのうまうまピッツァを作ってあげたいです」
「それはいいアイデアだね。じゃあスライスしたあとに細かく刻んで散りばめようか。食材はなにを使おうか。秋ナス、トマト、サーモンといろいろあるけど、トリュフに合う食材が分からないから、好きに使ってくれてかまわないよ」
「「ありがとうございますっ!」」
トリュフ満載のピッツァが作れる。
それ以上に、フェアリーたちにピッツァを作ってあげられる。そして満面の笑みの『ありがとう』をもらうのだ。こんなに幸せなことがあるだろうか!
「すみれはピッツァになに入れる? いろんな環境に住む人たちがいるから、具材は2つか3つくらいにしておいたほうがいいかも」
「ではシンプルに秋ナスとトマト、あとはかぼちゃなんていかがでしょう。かぼちゃのポタージュがありますが、ほくほくのかぼちゃも楽しみたいです」
「いいね! 角切りにして散りばめよう」
「やりましょうっ!」
食材選びが終わればあとは切って揃えて散りばめる。
こんがりふつふつのピッツァにはかぐわしいトリュフを散りばめる。
フェアリーの分のピッツァは手のひらに乗る小さなサイズ。具材は人間と同じ縮尺になるように細かく刻んで散りばめる。最後に刻んだトリュフをふりかければできあがり。
せっかくなので、追いトリュフができるようにトリュフを余分にスライスしておこう。
なんという贅沢。追いトリュフなんて聞いたこともない。
自然と笑みがこぼれてしまう。
「ふっふっふ。ふふふのふ♪ これをフェアリーたちに見てもらえば大絶賛間違いなし!」
すみれも笑顔がこぼれてしまう。
「きっと彼女たちも大喜びで舞い踊りますよ。気に入ってくれるといいですね♪」
全員分のピッツァを焼いて、最後に私たちのテーブルの分を持って行く。
待ちきれない様子のフェアリーたちは厨房から出てくる私たちを立ち上がって待ち構える。
きらきらした瞳が眩しい。
「お待たせ。トリュフを使ったアウトゥンノ・ピッツァだよ♪ ナスとトマトとかぼちゃ、二種のチーズにトリュフを振りかけた、メリアローザで最初のトリュフ料理だ。召し上がれ♪」
「「「「「うわぁ~! おいしそ~! すみれ、ラム、ありがとう!」」」」」
「「どういたしまして!」」
ありがとうを頂きましたー!
いやぁ~、料理人冥利に尽きますな。
それでは我々もいただくといたしますか。




