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異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 4

 価値観の相違は時に不幸な行き違いを生むものよ。

 ともかく、暁にもトリュフの香りとおいしさを堪能してもらう名目で、すみれレーダーに反応するだけのトリュフを掘り出そうと思います。


「と、言うわけで。すみれ、トリュフを探す魔法を私にも教えてほしい」

「えっ? トリュフを探す魔法なんてあるんですか?」

「えっ!?」

「ん?」


 沈黙すること3秒。レーレィさんが割り込んで話しを整理する。


「すみれちゃんが感じたキノコの気配は探知魔法を使ったものじゃなくて、勘ってやつじゃない?」

「勘ではありません。キノコさんの声が聞こえた気がしました」

「「マジか……」」


 レーレィさんと私の感情がシンクロした。

 双子はすごいすごいと拍手喝采。

 フェアリーたちも見知らぬキノコに拍手喝采。

 つっこむ隙もなく、すみれのキノコレーダーに感アリ!


「むむむむむっ! 黒トリュフより強烈なおキノコ長老様の気配がしますっ!」

「「おキノコ長老様!?」」


 長老だと?

 トリュフ以上の存在があるというのか?


 あたりを見渡して10秒。彼女は近くの梅の木を見つけて根本を確認した。

 そして当然のようになにかを採取する。おかしい。さっきまでいた立ち位置からでは梅の木の裏側は完璧に死角のはずなんだが……。

 自慢げに、そして満足げな笑顔を向けるすみれのなんてかわいらしいことだろう。

 彼女は嬉しそうにキノコを持って私たちに見せてくれる。


「見てください。天然の霊芝ですよっ! それもあちこちにあるんです! グレンツェン側の世界で霊芝は人工栽培に成功してますが、メリアローザ側ではまだのはずです。ここに菌糸があるはずなので、メリアローザでも栽培しましょう!」


 笑顔を向けられた暁は興味深そうにそれを見て、しかしこれはどんなキノコなのかと首を傾げた。


「見たことのないキノコだ。そちらの世界で栽培されるということは、食用か薬用にしてるのか?」

「はい。主に薬用に利用されます。容量用法を守って使えばたいへんに体にいい不老長寿の秘薬になります」

「不老長寿の秘薬ときたか。ちなみに、容量用法を守らなかったらどうなるの?」

「めまい、鼻血、全身のかゆみ、血便などなど、たいへんなことになります!」

「それはまた、たいへんだな……。薬と毒は表裏一体というのは古今東西、異世界も共通ということか。世の常だから許容できる範囲だな。あとで太郎に見てもらおう」

「ぜひ! それと、ここは霊芝と黒トリュフの群生地なので、特別に保護されたほうがいいかもしれません」

「ふぅむ。とりあえず、詳しい調査が必要かもしれないな。アリメラの階層は古くからメリアローザに知られていた反面、詳細な植生や生態系の調査はほとんどしてこなかった。そういった場所も、もう一度洗いなおしたほうがいいのかもしれないな」


 暁が思案に耽る最中も、双子と三色髪の仲良しトリオは広葉樹の森を駆け回る。

 これが若い子のバイタリティ。二十歳を超えた大人が無くした元気に満ち満ちている。


「わぁーい! 僕も黒トリュフを掘るの手伝うよ。土属性の魔法が得意だからね。掘削……穴掘りは得意だよ♪」


 仕事柄、サンジェルマンさんの口から専門的な用語が飛び出してしまうのはご愛嬌。

 それより、異世界渡航一行の中で最も年長のサンジェルマンさんのほうが体力と気力に溢れるって。なんか心が老いた気がして悲しくなってくる。

 そんな現実から目を逸らすため、私はフェアリーたちが採取するおキノコ大王様を手持ちのバスケットに入れてあげたいと思います。

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