異世界旅行2-4 世界は驚きの宝箱 3
ひとしきり満足するも、アルマたちはまだ満足しない。完璧を目指してドラゴンウォークの練習を続ける。
暇な時間をどうしようか。みんなの顔を見渡すと、三色髪が跳ねまくる。
「はいはいはーい! あっちの森に山菜散策に行きたいですっ! あっちからおいしい気配がします!」
「「「「「おいしい気配!?」」」」」
どういう気配なのか分からないが行ってみよう。自然を堪能できるのも異世界の醍醐味だ。
グレンツェンは花々に囲まれるも、開発が進んで森とか山とか周りにないんだよね。
午後に紅葉狩りが控えるものの、すみれと一緒の散策は楽しい。エルドラドでも楽しい思いをさせてもらった。散策というよりは、引きずりまわされた感があったけど。
すみれが森に入ると右にきょろきょろ。左をきょろきょろ。
かわいい双子もすみれに合わせて右に左に目を凝らす。
「むむむっ! あっちからキノコの気配を感じる!」
「あっちってどっち!?」
キキちゃんの鋭いツッコミが炸裂。彼女も必死だ。物資の供給が限られるメリアローザで山の幸は貴重な食料のひとつ。メリアローザの子供たちは小さい頃に山の歩き方を覚え、食材を知り、採り、食べる。それが幸せに通ずると知っているから。
だからキキちゃんもヤヤちゃんも必死。目の色を変えて歩き回る。
キキちゃんの疑問にすみれが立ち止まって答えた。
「キノコの気配……キノコの気配…………むっ! 足元から感じる!」
「「足元!」」
彼女たちは一斉に足元を見た。
なにもない。ふかふかの土だけだ。
キキちゃんとヤヤちゃんはシンクロして首をかしげる。
なんて息の合った動作なんだ。愛くるしい。抱きしめたい。
「すみれさん、足元にはなにもないようです!」
ヤヤちゃんの事実確認にすみれは否を突きつける。
「いいや、ここからたしかにかぐわしいキノコの気配がするっ!」
「「「「「「「なっ、なんだってー!?」」」」」」」
双子にくわえてフェアリー5人が声を揃えた。
全員まとめて抱きしめたい。
すみれがしゃがんで地面を掘る。すると黒い塊が現れた。
「狸の糞か?」
暁が余計なことを囁いた。
「違います。おキノコ大王様です」
おキノコ大王様て。
すみれが掘り出したキノコはイボセイヨウショウロ。通称【黒トリュフ】である。
本当におキノコ大王様だった。
「うんこにしか見えん」
暁はうんこ好きなの?
そういえば、エルドラドで紙を作るのにマンモスの糞を利用したって言ったな。
メリアローザで手に入れた最初の本はうんこの本とも聞いた。
うんこが好きなのかもしれない。
うんこと言われて、すみれより先に私が暁の肩に手をかけた。
「暁、悪いんだけどそれをうんこって言うのはやめてくれ。少なくともグレンツェンでは高級食材だから」
「これが!?」




