異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 58
~おまけ小話『リリス姫の傍観』~
暁「今日はずいぶんとおとなしいですね。三つ首のケルベロスなんて見つけたら、シャルロッテ姫様と奪い合いそうなものなのに」
リリス「私をいったいなんだと思ってるんですか? そんなに褒めてもなにもでませんよ~♪」
暁「まだ何も言ってませんが? リリス様ならシャルロッテ姫と共謀して、ダンジョンに潜り込み、ケルベロスを手に入れた挙句、あたかもなにもなかったかのように完璧に証拠隠滅と隠ぺいをしてくると思いました」
リリス「――――――――というのはおいといて♪」
インヴィディア「この子、見た目に反してデンジャラス?」
リリス「私に触れたら火傷しちゃいますよ♪」
シェリー「ニトログリセリンの化身ということですね」
リリス「ひどいっ! シェリー様までそんなっ!」
暁「で、なにか理由があったんですか? 途中から傍観モードでしたけど」
リリス「ふっふっふっ! 私は傍観していたのではなく、観察していたのですよ。シャルロッテ姫のユニークスキルをっ!」
暁「シャルロッテ姫様のユニークスキル。気にはなりますが、プライバシーの問題があるので説明してくださらないのでしょう?」
リリス「ここにいる方々は口が堅いので大丈夫です。それにシェリー様は知っておいたほうがいいかもしれません」
シェリー「ユニークスキル……。個人が持つ特殊な魔法のことか。興味はありますが、あの姫様のことですから、それを聞いたところでどうしようもない気がします」
リリス「はい、結論から言えば聞いたところでどうしようもありません。ですが、聞いておいて損もありません。シャルロッテ姫のユニークスキルは【女王】。尊敬を感じた相手に忠誠心を与えるというものです。これのおかげでピウスは姫様に忠誠心を感じたのでしょうね。まぁこんなユニークスキルなんてなくても、シャルロッテ姫の魅力と心の温かさがあれば、ずっと仲のいい主人と使い魔でしょうけれど」
暁「なるほど。無意識に発動する系ですか。聞いてもどうしようもないですね。個人的にはシャルロッテ姫のことを尊敬はしてますが忠誠心を感じません。既に別の人に忠誠を誓った場合は無効ですか?」
リリス「その場合、忠誠心というよりは好感度の高い隣人くらいの扱いになるようです」
シェリー「好感は持たれるのか。たしかに姫様は好感度だけは高いからな」
インヴィディア「だけ、って……」
リリス「安心してください。ちょっと尊敬したくらいでは忠誠心は植えつけられません。ちょっと好感度があがるくらいです」
シェリー「それ、普通のことでは?」
リリス「ちなみに、シャルロッテ姫がユニークスキルで植えつけた忠誠心を裏切るようなことをすれば簡単に離反されます」
シェリー「それも普通のことなのでは?」
リリス「そんなことありませんよ。普通は長い時間をかけて育まれるはずのものを、環境と言動と態度だけで速攻手に入れてしまう恐ろしい能力です。とかく、シャルロッテ姫の心根が優しい性格でよかったです。悪用しようものならなんでもできそうなヤバいスキルですよね♪」
暁「ね♪ では済まされないレベルなのですが。それでずっと静かに観察されてらっしゃったんですね。シャルロッテ姫が自分の能力を無意識に悪用しないかどうか」
リリス「ええ、でも周囲の人々は良識を持った人たちばかりのようですし、尊敬するかどうかはその人との関係性だったりしますし、忠誠心を受けるかどうかは当人の価値観に準拠しますから、絶対ではありませんので大丈夫でしょう」
暁「結論から言うと、微妙系スキルってことですね」
リリス「たしかに微妙なところではありますが、日和み的な人の心をわずかわばかりとはいえ自分に向けさせておけば、ぽっと出の声が大きいだけの人間には人望で負けなくなります。これは王族や貴族にとってはとても大事なことなんですよ?」
シェリー「風の噂や根拠の無い悪口には耳を貸さなくなるということですか? だとしたら精神的な防衛策として有用ですね。過去を遡れば、王権を崩そうと意図的に流された悪い噂や偽の悪評は数えきれない。姫様にとっては重要なユニークスキルになりそうです」
インヴィディア「問題は姫様自身の性格がアレなことね」
暁「悪い性格じゃないんですけどね。性格がアレだと疑われることも多そうですね」
シェリー「それについてはノーコメントで」
インヴィディア「シャルロッテ姫が素敵なお姫様だから、悪いようには使われなさそうでよかったわ。ちなみに、ザ・クィーンの能力はそれだけなの? ほかの部分も観察してたんじゃなくて?」
リリス「さすがインヴィディアさん。鋭いですね。ザ・クィーンの能力で忠誠心を受けた人や動物は潜在能力を開花させたり、身体能力が著しく上がることがあるそうです。それについては環境の変化や、姫様を慕う心の大きさに起因するようです。ピウスが空を飛んだのも潜在能力の開花ですし、シェリー騎士団長が姫様を心配して超ダッシュしたのもザ・クィーンの能力で身体能力が上がったからです」
シェリー「そうだったのか。全然気づかなかった。いつもより調子いいなーというのは感じましたが。火事場のバカ力というやつですか」
リリス「その通りです。国を守る騎士たちを姫様が鼓舞すれば、超パワーを発揮する一騎当千の兵が出来上がっちゃうイメージです。さらに姫様が先陣を切ろうものなら、人間の限界を超えたパゥワァーッを出せるかもしれませんっ!」
暁「聖女光臨のようですね。でも姫様にその魅力がありそうな気はします。臣下としては姫様に危険な戦場へ赴かせるわけにはいかないでしょうけど。だからこそ、兵は勢いづくのでしょうけれど」
シェリー「そうならないようにするのが私の役目だ。もしも窮地に陥って、彼女が自分の能力を知っていたなら、姫様はピウスに跨って躊躇なく戦場でジャンヌダルクになりに行くだろう」
暁「その時は我々にも声をかけてください。冒険者全員を引き連れて参戦しますよ。ただ、冒険者は対モンスター戦しか経験がないので、魔獣相手の時のみお願いします」
シェリー「あまりにも心強すぎる助っ人だな。万一その時が来てしまったら、よろしく頼むよ」
リリス「あ、じゃあ逆に我々が困ったらサンジェルマンさんに来ていただいてよろしいですか?」
シェリー「サンジェルマンさんに? それは構いませんが、規模にもよりますが第二騎士団の半数くらいならすぐに派遣できますよ?」
リリス「いえ、サンジェルマンさんのユニークスキル的にはお一人様のほうが都合がいいですね」
シェリー「え、それはどういう理由で?」
リリス「サンジェルマンさんのユニークスキルは【窮地に必勝を得る】。どんな状況でも窮地なら必勝してしまう、人類史上最強最高のユニークスキルです。まさに英雄と呼ぶにふさわしい!」
インヴィディア「窮地に必勝を得る。まさに英雄が英雄たる所以のユニークスキルね」
暁「サンジェルマンさんっぽいユニークスキルです。窮地に必勝を得るって、言葉通り最強ですね」
シェリー「だとしても、わざわざ窮地に追いやるのは違うような気が……」
リリス「本人が窮地において、なお諦めない心がないと発動しません。それに、ある程度の実力がなければなりません。サンジェルマンさんは実力もあって絶対に諦めない心を持ってらっしゃる。超かっこいい大人ですっ!」
サンジェルマン「え、なになに? 寝ようと思って布団に入った途端に僕を呼ぶ声が聞こえた気がするんだけど」
暁「すごいですね。食堂から男性用の離れは直線距離だとしても500メートル以上はあるはずなんですけど。途中に壁やら入り組んだ廊下やらあるのに、どうやって聞こえたんですか?」
シェリ―「耳じゃなくて、心で捉えたんじゃないかな…………」
インヴィディア「窮地なら英雄の超能力だけど、今この現状だと面倒くさい色ボケおやじね。必ず女の子の背後を歩くし」
レーレィ「ごめんなさいごめんなさい! 旦那にはあとで厳しく言って聞かせますので!」
シェリー「サンジェルマンさんが英雄……。ユニークスキル的にお一人様だと都合がいいということだが、その後のことも考えて何人かは監視を送り込ませてくれ」
リリス「えぇ、そのほうがよいかもしれませんね……」
ばれないようにこっそりと使い魔を手に入れるどころか、トラを懐に入れて上手に地獄の番犬を手に入れようとしたところ、激情のままうっかり自分から本音をしゃべり、こそこそしていたことが白日の元に晒されました。というか晒しました。
ひと悶着あったものの、姫様は無事にピウスを使い魔にすることができました。
シェリーは頑強なモンスター・カトブレパスを仲間たちと決死の覚悟で倒すことに成功し、クロに名前を覚えてもらえるほどになりました。
最後の最後で詩織から疲労困憊に鞭打つ事実を教えられたものの、癒しを頼りに心の平穏を保つことができました。
姫様はピウスを使い魔に従え、シェリーはクロに認識されるまでに至り、同時にカトブレパスの特殊な毛皮を手に入れ万々歳。
ことの経緯はともかくとしてっ!
次回はラム・ラプラス主観で進むドラゴンライドする回です。
全力ファンタジー回ですね。魔法を放つことができるドラゴンに乗った魔法大好きっ子が問題を起こさずに離着陸できる気がしませんね。
昼からは紅葉狩りです。メリアローザにある紅葉は二枚貝のような大きな葉っぱの内側にもちもちの実が入ったファンタジー木の実です。
午後には珍客を迎えてのティーパーティー。晩御飯は山の幸たっぷりの宴会です。
パーティーとイベント目白押しの4日目です!




