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ティーパーティー

 仲良くなるために、スーパーで買い物を済ませたすみれたちはティーパーティーを開催します。

 わいわいする中、彼女たちは夢について語りだす。

 すみれは島から出てまもやく、何者になれるか分からなくて不安になる。

 はたして、彼女は自分の夢を見つけることができるのでしょうか?




以下、主観【小鳥遊すみれ】

 6人分の椅子が並んだ机の端は天板を持ち上げると、ちょうど11人分のスペースができるようになる。

 運び込んだ椅子と自慢のティーカップを持ち寄って机に並べ、思い思いのお菓子を並べた。

 机の上にはお菓子の花が咲いたように賑やかになって、どれから摘もうか迷ってしまう。

 カップに紅茶を注ぎ終わり、主催のティレットさんが手を叩いた。


「みなさま、急なお呼びかけにもかかわらず、集まっていただいてありがとうございます。そしてこの場を貸してくださったハティさん、すみれさん、アルマさん、キキさん、ヤヤさん。初対面にも関わらず、ご助力下さったルーィヒさん、ペーシェさん。改めてお礼申し上げます。どうぞこれからも、末永くお付き合いいただけますよう、心よりお願い申し上げます。それでは、今日のこの良き日と、皆々様の未来を祝って、乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」


 カップを宙に持ち上げて、そのまま口元へ紅茶を運んでひと含み。

 ソーサーに戻して拍手喝采。

 なんというか、新年の挨拶みたいに儀礼的な形。こういうのがティーパーティーの習わしなのかな。なんにせよ、なんかいいな、こういうの。


「ティレット、めっちゃ形式ばってんね。懇親会の幹事みたい」


 楽しそうに笑うペーシェさん。


「え、そうですか? 私としてはかなりフランクにまとめたつもりだったのですけれど」


 一般的なものとは違ったらしい。

 指摘されて、ティレットさんは恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 ルーィヒさんは驚いて、それもまた楽しいという笑顔でティレットさんにアドバイスをする。


「マジか。仲間内のお茶会なんだからもっと気楽でいいんだよ。イェーイッ! って感じ」

「い、いぇーい?」


 ティレットさんは頑張って無理にはっちゃけてみるも、慣れない所作が中途半端になってしまって赤面必至。


「まぁまぁ、いいじゃないか。さぁ諸君。飲んで食べて騒ごうじゃないか!」

「ルーィヒはなんかおっさんくさいよ?」


 盛り上げ役の2人が笑いを誘って場が和やかになった。出会った時からそうだ。ペーシェさんとルーィヒさんは人の心に寄り添うのがとっても上手。

 近すぎず遠すぎず、しっかり手を握ってくれる。そんな安心感があった。

 積極的に会話を広げるルーィヒさんはハティさんに質問攻め。

 ペーシェさんは引っ込み思案と言っていたガレットさんと打ち解けている。

 アルマちゃんとウォルフさんは魔法の話で盛り上がっている様子。


 そして私のお隣さん。ブロンドの髪が美しいティレットさん。

 こういう時は何を話せばいいんだろう。

 好きな食べ物?

 趣味?

 お花?

 自分から言葉を投げようにも、投げ方が分からない。

 キキちゃんはお菓子に夢中で助け船が送られてくる気配もない。

 ダメよすみれ。自分から道を切り拓くの!


「あ、あの、ティレットさんは、趣味ってあるんですか?」


 緊張のあまり、趣味を聞いたことを忘れて趣味を聞く。

 聞かれてはっとした顔のティレットさん。なにかに期待している様子。


「え、あぁえっと、実はボードゲームが趣味で、…………そ、そう麻雀。前から興味はあったのだけれど、ルールがいまいち理解できなくて。ネット環境もほとんどなかったから。もしよかったら教えてくださいませんか? もし、よかったらでいいのですけれど……」

「麻雀? うん、絶対。絶対やろう。面白いから絶対!」

「はいっ!」


 まさかこんなところで麻雀仲間ができるなんて思ってもみなかった。

 島での娯楽は唯一、麻雀と将棋。おはじきとか土いじりとか、そんなのばっかり。

 外の世界に来た時には、どれも通用しないものばかりかもと思っていたけど、そうじゃなかった。

 今までやってきたことが報われたような、共通の話題で会話が弾む楽しさというか、同い年の女の子と、好きなことについて話し合えるのって、なんだか特別って感じる。


 それからティレットさんの趣味のボードゲームの話で盛り上がって、ゲームが好きなキキちゃんも興味を持って、みんなで遊ぼうって約束をした。

 というか、ポケットに忍ばせたトランプを出してきた。

 これは筋金入りだ。

 本物の遊び人だ。

 今すぐやりたそうな顔をしている。


 お菓子が底を尽きそうになると、ハティさんがオーブンで焼いたアップルタルトが追加された。結構お腹がいっぱいだったのに、甘いものは別腹なのか。切り分けられたスイーツにかぶりつくのは女の子の性。

 とろとろに煮詰めたあま~いリンゴと、シナモンがふりかけられたシャキシャキ食感の黄色いリンゴのダブルパンチ。

 生地はシュー生地のようにサクサクとして食べやすい。

 ハティさんの自慢の得意料理というだけあって、また食べたいと思わせられるほどの中毒性を持ち合わせている。


 それからは趣味の話や故郷の自慢。カードゲームで遊んだり、オススメの講義を教えてもらったり。

 とにかく自分の知らないことが世界にはたくさん溢れてるってことが、なんだかとってもわくわくして、これからいっぱい体験できると想像しただけで胸が熱くなった。

 知ることはとても楽しい。経験することはもっと楽しい。


 空を飛ぶこと。

 誰かとおいしい料理を食べること。

 一緒に住んで生活すること。

 これからもっともっと、自分の心をカラフルに描いていきたい。


 ペーシェさんに講義の取り方を教えてもらう前に、夢について質問される。

 自分は何になりたいのか。どんな風に生きていくのか。したいことは何か。

 質問されて、答えられなかった。


 そもそも夢とは?

 ペーシェさんは舞台作家。

 ルーィヒさんはファンタジー小説家。

 ティレットさんは家督を継いで領主になること。

 ガレットさんはお嫁さん。

 ウォルフさんはティレットさんの護衛兼執事。

 エマさんは料理人。

 ハティさんは子供たちに勉強を教える教師。

 アルマちゃんは最高の魔法使い。

 キキちゃんはギルドマスター。

 ヤヤちゃんはキキちゃんのお手伝い。


 みんな、それぞれに夢を抱いて、夢のために歩を進めてる。

 私は……?

 私はどうしたいんだろう。

 それを考えるのはまだ先。

 今はまだ何も知らない。何も分からない。

 少なくとも、ここにいる誰よりも、知識も経験も不足している。

 だから、まずは色々やってみよう。積極的に関わってみよう。

 新しい一歩を踏み出すのは、不安で怖くて足踏みをしてしまいそう。だけど、勇気をもって前を見よう。

 きっとそこに、素敵な明日があると信じて。

 まだ夢は思い描けなくとも、これからいろんなことを見て知って、経験していく中で、やりたいこと、なりたいものを見つけるでしょう。


 次回は、引越し祝いのディナーの時間です。

 すみれが腕によりをかけて作る鯛料理。はたして彼女はみんなにおいしい料理を振る舞うことができるのでしょうか?

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