異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 50
「姫様、貴女はベルン王家の一人娘なんですよ。そんな危険なことに関わるのはやめてください。モンスターカーレースに参加するなら、三千里譲っても妨害案を提案してVIP席で鑑賞するまでにしてください」
「それではお父様と同じではありませんかっ!」
「正直申し上げますと、それもやめてほしいくらいです! 一国王が人の命を軽んじるような行為は謹んでいただきたい。姫様もです。アルマの言ったことは忘れてください」
「アルマのこともアルマの言ったことも忘れないでくださいっ!」
「忘れませんっ! アルマさんのこともアルマさんが言ったことも忘れませんっ! ピウス! 貴方はどんな魔法が使えますか?」
姫様が国王様と同じ道を行こうとしている。
どうすれば止められるのか!?
考えるより先にピウスが褒めてほしくて自分のできることを自慢する。
『真ん中の頭は火属性の魔法が得意! 右の頭は雷属性の魔法が得意! 左の頭は氷属性の魔法が得意だよ!』
ピウスは口を開けるたびに小さな魔法を披露してみせた。
真ん中の頭の口の中に火の玉がぽっと出る。
右の口からは電気がパリパリ弾けた。
左の口からは氷の塊が現れ、吐き出すようにぺっと床に飛び出した。
これを見た姫様がとにかくピウスを褒めちぎる。
「ひゃあ~♪ いろいろできるなんて、ピウスはすご~い♪ かっこいい~♪ そぉ~れそれそれもっふもふもふ~♪」
『『『わふぅ~ん♪』』』
めっちゃ楽しそうなのは喜ばしいことなのだけど、現時点で小型犬サイズのピウスが10トントラックサイズで魔法を放とうものなら、生物兵器のそれである。そんなことが世の中に知られれば国際魔術協会が黙ってない。
4万キロ譲ってピウスに縮地を使わせてモンスターカーを追うのはいいとしよう。でも魔法を使って追い回すのはダメだ。体裁的にもビジュアル的にもアウト。27アウトで即試合終了である。
「ピウスに魔法を使わせるのはやめたほうがよろしいかと。国際魔術協会に何を言われるか分かりませんよ? ピウスが大事なら謹むべきところは謹んでいただきたい」
「分かりました。ピウスに乗ったわたくしが魔法をぶっぱなしてモンスターカーを大破させます」
「なにひとつとしてよくないです。とにかく、ドラゴンに乗るのは構いません。モンスターカーレースに関わるのはやめてください」
「むむむっ……ではどうすればピウスのかっこよさとかわいさともふもふさを世間に知らしめればいいんですかっ!」
「話しが変わってますよ?」
「――――なんの話しをしてましたっけ?」
興奮しすぎてシャルロッテ姫様の脳がバグってきた。
話しを整理しよう。
アルマとベレッタがドラゴンに乗ってモンスターカーレースの妨害要員をするかどうか。
以上。




