異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 49
なぜか、どういうわけか、期間限定で悪魔でも取りつかれてるんじゃないかと噂されるほど、ベルン国王様はモンスターカーレースに容赦がない。
ルールに関する倫理観の緩さもさることながら、レース中の公式の妨害工作がえげつない。しかもどれもラファエル国王発案というのだから頭が痛い。
あの時期になると、いつも心の中に『この国に尽くしていて大丈夫なのだろうか』と思ってしまう。
「倫理的な問題……は、一旦置いておこう。それより、ベレッタはともかくアルマはドラゴンを操作して空を飛んだことはあるのか?」
「まだありません。ので、めちゃくちゃ楽しみですっ! ベレッタさんも楽しみですよね!」
「ドラゴンに乗るのはすっごく楽しみ。だけど、モンスターカーレースのレーサーを妨害するのは、ちょっと……」
ベレッタは優しい性格をしてるからな。よかった。安心した。アルマみたいにレーサーをウェルダンすることに躊躇がなかったら、これからどう接すればいいか分からなくなるところだった。
優しくて人一倍思いやりのあるベレッタが健在のようで安心した。最近は上司のユノにかける圧が凄いと噂に聞こえていた。だけどどうやら噂は噂だったみたい。
ドラゴンに乗るのは楽しみだけど妨害工作はしたくないベレッタに提案をしよう。
「先日はノリと勢いでドラゴンに乗るが吉って言われたが、ベレッタが嫌ならヘラさんに断れよ? ドラゴンに乗るのが吉ってだけで、モンスターカーレースの妨害をするためにドラゴンに乗るべきって言われたわけじゃないんだから」
「それは、もちろんです。でもできればアルマちゃんと一緒にいる時間を大切にしたいです。それに、ドラゴンは異世界の産物。騎乗する人間は限定されます。わたしが魔法の道を歩めるのはラファエル国王のおかげでもあります。なので、できるだけ国王の意向には沿いたいと思ってます」
「殊勝な心がけだ。でも嫌々することを国王様は望んでない。そこだけは理解してくれ」
私の言葉を肯定したベレッタが優しく微笑む隣で、シャルロッテ姫様が満面の笑みを浮かべて前のめりになる。嫌な笑顔だ。
「ベレッタさんが乗らないなら是非ともわたくしがっ! わたくしがドラゴンに乗ってモンスターカーを追い回してみせますっ! ウェルダンしちゃいますっ!」
「ウェルダンしちゃわないでください」
姫様まで父親と同じ仕掛ける系モンスターカーレース狂人になられては困る。本当に困る。市井の住民を魔獣から守護する騎士団からしてみれば、同意書があるとはいえ人間を襲うなど言語道断。そう思うとやっぱり国王様は期間限定で悪魔に憑かれる体質なのかもしれない。
姫様にはモンスターカーレースにはノータッチでいただきたい。
なのに、ウェルダンしたいアルマが横から余計なことを叫ぶ。
「姫様にはピウスという素晴らしい使い魔がいるじゃないですか。ピウスは空を駆けてましたよね。火達磨になってたのは呪いのせいで、それは解呪されたわけですが、地獄の番犬なら火くらい吹けるのではないでしょうか? それに【縮地】の魔法を使ってましたよね。つまりケルベロスに乗って縮地の魔法でモンスターカーを追い回し、口から火を吹いてバカどものケツを追い回し倒して地獄の番犬たる所以を世間に知らしめ、ピウスのかっこよさとかわいさともふもふさを世の中に認めさせるというのはどうでしょうかっ!」
「いいですねっ!」
「よくないよっ!」
よくないよ。全然よくないよ。そんなこと。




