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異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 43

 止める間もなく風のように駆け上がるピウスを見て思う。スタァホワイトの匂いってモンスターが嫌いな匂いじゃなかったっけ?


 呟くと、マルタから使い魔についての話しを聞かされるベレッタが仮説を立てた。


「使い魔になると、主人の魔力を得て通常の動物とは違った性格を獲得することがあるそうです。モンスターが嫌いな匂いも、主人が好む物なら害を感じなくなるのかもしれません」

「それは多分にありえるな。多少なりとも、主人の性格に似てくるって言うし。まだまだ検証の必要な領域で、わからないことだらけの分野だ。とにかく、姫様はスタァホワイトをベルンで栽培するって意気込んでるし、ピウスの生活に支障が出ないなら問題ないか」


 スタァホワイトの栽培と聞いて、花の都の主人が食いつく。


「スタァホワイトを栽培するならグレンツェンでも実験させてほしいわ。フェアリーたちの匂い袋を楽しませてもらったんだけど、とっても素敵な香りだった。それにモンスター除けになるなら魔獣にも効果があるかも。効果が示されれば、一般家庭をはじめとして簡易で有用な護身用のアイテムとして流通させたいわ!」

「それは私も考えました。まずは成分の分析をしたいので、できるだけたくさん採取したいところですね。暁、それについては合意してもらえるだろうか?」

「もちろんです。ですが、まだまだ未知の素材。もしかすると人間に悪影響がある可能性も否定できません。採取はほどほどに、管理は徹底的にお願いします。ひとまず毒性があるかないかだけ、こちらで検査をしましょう。お渡しするのはそれからということでいいですよね?」

「もちろんだ。よろしく頼むよ」


 暁と握手をして、私たちの拳の上にヘラさんが手を添える。次にアルマの袖が我々の手を覆った。そして予想外の言葉が飛び出る。


「つまりスタァホワイトを別の場所で量産できれば、三日月岩は不要ということですね。その時になったら教えてください。岩もろとも、粉みじんにして消滅させます」

「魔力を霧散させる鉱石の研究もしたいから、壊すのはやめてくれ」

「ちっ…………!」


 どんだけ憎いんだ……。

 彼女の前で魔法を否定することだけは、決してしてはいけないな。


 ♪ ♪ ♪


 時は夕暮れ。茜色の光を浴びる姫様と地獄の番犬は太陽の恩恵を惜しむようにフレナグランの周囲を練り歩く。

 姫様を乗せたケルベロスがのっしのっしと練り歩く。

 よほど嬉しいのだろう。姫様も、ケルベロスも、べったりとくっついて離れようとしない。

 一周回っては太陽に吠え、二周目を楽しんでは太陽に吠える。


「そろそろ晩御飯の卓に着いてほしいんですが……。これ、陽が落ちるまでやるんですか?」


 秋空が暮れるのは早い。夜空が近づくにつれ、風も冷たくなってきた。お腹も減ってきた。なんて言ってディナーに誘ったものか。

 月並な質問をして、姫様は満足した様子でピウスの背中を降りてくれた。

 彼は食堂に入る大きさに縮んで姫様の足元にすり寄る。


「わたくしもそろそろお腹が減ってきました。ので、晩御飯にいたしましょう。そのあとは一緒にお風呂に入って、しっかり体を洗ってあげましょう。一緒のお布団に入って、同じ夢を見るのです♪」

「いろいろと無理があるので、ある程度は諦めてください」


 私の忠告もなんのその。わくわくのせいで聞こえてない。

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