異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 41
問答する私たちの間に突如としてケルベロスが割って入った。
『じ、実は、その、三日月岩に咲く花がないと呪いが解けないっていうのは、本当は、嘘なんだ……』
「は? 嘘……?」
ケルベロスの言葉に振り返ってみると、彼は悪鬼羅刹を前にして怯えるような表情を見せた。
姫様が私の前に立ちはだかる。
「本当のことを言ったら怒らないけど、嘘を言ったら怒るシェリーさん怖いので落ち着いてくださいっ!」
「丁寧に全部言わなくてもいいんですよ?」
「きっとこれには訳があるはずです。ピウスは賢い子ですから、きっとこれには訳があるはずですっ!」
必死の弁明をする姫様の後ろで怯える地獄の番犬に聞きましょうか。
「ピウス、なぜそんな嘘を吐いたんだ? 本当のことを言ってくれ。嘘を言ったら怒る」
「シェリーさん落ち着いて! 顔が、顔が超怖いから! そんな顔されたら落ち着て話しなんてできないから!」
1000年の時を生きるインヴィディアさんから見ても相当凄い形相をしてるみたい。
仕方ない。両手で顔を隠して誤魔化そう。
「シェリー様、覇気がだだ漏れです」
リリス姫ですら感じるほどの覇気を放っているらしい。だとすれば、私は一体どうすればいいんだ?
一応、本当のことを言ってくれたら怒らないっていう意思表示のつもりなんだが。
仕方ない。少し離れてみるか。
姫様はピウスに深呼吸を促し、怖くないのおまじないをかける。彼も少し落ち着きを取り戻したのか、顔を上げて真実を語り出した。
相変わらず、私を直視しようとはしない。
『分からなかったんだ。シャルロッテが本当に僕のことを大事に思ってくれるのか。だから試してみたんだ。僕のことを本当に大切にしてくれるなら、多少の試練くらいなら挑んでくれるって』
「そういうことだったのですね。言葉ではなく、態度で示して欲しかった、と。わたくしは貴方の気持ちに認めてもらえるでしょうか?」
『もちろんっ!』
「ありがとうっ!」
抱きしめ合う二人にこれ以上の言葉はいらない。
私としても真実を、彼の気持ちが聞けて満足だ。
謝罪と、これからよろしくという意味で彼の頬を撫でようとするも怖がられて避けられてしまった。
正直、これは結構、傷つく…………。




