異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 31
さっそくサラダを食べようとすると、フェアリーたちがサラダボウルに集まってわくわくを咲かせた。
「四角いチーズがあります。オイル漬けのチーズだそうです。どんな味がするのでしょう♪」
月下は新しい体験にわくわくのご様子。
「白いにんにくが使われているようです。どんな味がするのでしょう♪」
白雲がどきどきするのも無理はない。メリアローザに白ニンニクはなかった。先月、暁の不断の努力と交渉により、白ニンニクを輸入することに成功したそうだ。
とはいえ、まだまだ普及の少ない白ニンニク。どんな味がするのかわくわくのご様子。
「それじゃ、まずはひと口食べてみる?」
「「「「「食べるっ!」」」」」
爪楊枝にオイル漬けチーズを刺して彼女たちの前に差し出す。
最初はローズマリーが挑戦。
大きな口を開けて、ぱくり!
「もちゃもちゃ。もっちゃもちゃちゃもっちゃっちゃ…………もちゃ? もっちもっちもちゃちゃもちゃもちゃ…………ごくり」
咀嚼して、呑み込んで、見たことのない微妙な顔をみせた。
お次は月下。大きな口を開けて、もぐもぐ。
「もっちゃもちゃもっちゃ…………もちゃちゃ? もちゃー……もちゃもちゃ。ごっくん」
月下も同様に微妙な顔をする。どうやらお口に合わなかったようだ。
続く赤雷も白雲も、バーニアも同様に微妙な表情をして沈黙。
黙って見ていたラムが申し訳なさそうな顔をしてフェアリーたちに弁明を始める。
「食文化が……違うんだよね、多分」
「ラムさん! 諦めるのはまだ早いですっ!」
「な、なんだってーっ!?」
ラムの背後から現れたるは救世主小鳥遊すみれ。
ラムを連れて厨房へ戻り、あっという間に準備を整えてフェアリーたちの前へ舞い戻る。
「さぁ、みんなのためにサンドイッチを作るよ!」
「「「「「おぉ~っ!」」」」」
「まずはバンズを用意して、燻製葉野菜とベーコンとスライストマトを重ねます」
「「「「「おぉ~~っ!」」」」」
「そしてそして、ここに先ほどのオイル漬けチーズを使うよ!」
「「「「「……………………」」」」」
すごく嫌そう!
それでもラムは気にせず続ける。
「オイル漬けチーズを~~~~、火で炙って溶かしちゃうぞ~~~~♪」
「「「「「な、なんだってーっ!」」」」」
一瞬でテンションが有頂天!
ラクレットされたチーズがサンドイッチに注がれて、フェアリーたちの歓喜の雄たけびが沸き起こるっ!
「チーズがとろ~りして、サンドイッチにとろ~りしてるっ!」
「ひゃぁ~~~~っ! 香ばしくってとろ~りしてておいしそうです~~~~っ!」
フェアリーたちはとろ~りとろけるチーズを見て宙を舞い、小躍りを踊り、わくわくで跳びまわり、それはそれは楽しそうに喜びの歌を歌う。
当然だ。とろ~りチーズのアイデアにくわえ、ラムとすみれが用意したサンドイッチはフェアリーサイズ。つまり彼女たち専用のサンドイッチなのだ!
彼女たちのためだけに作られたサンドイッチ。嬉しくないはずがない。




