異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 29
漂流した先はアーディとベレッタ、アルマの輪。
ベレッタがクラリスたちとスイーツを作りに行ったという。彼女たちはどんな時間を過ごしたのだろう。
「アーディ、ベレッタ、アルマ、午前はなにをしたのか聞いてもいいか?」
「ええ、もちろんいいですよ。一緒にピッツァを食べましょう」
「ありがとう。それにしても、こうしてアーディとベレッタと卓を囲むのは久しぶりな気がするな。サマーバケーションの時も時間がとれなかったし。それで、アルマに何かあったのか?」
「ああ、それは……」
アーディが視線をベレッタに向けた。睨まれたと思ったベレッタは不意に視線を逸らした。
アルマは見るからにお腹いっぱいって顔してる。
試作したスイーツをひたすら食べまくったのか?
「うっぷ……もうしばらく、スイーツはいらないですぷ…………」
「そんなに食べたのか?」
「ちょびっとずつつまんだつもりが……いつの間にかお腹いっぱいになるくらい食べてましたっぷ…………あ、よかったら、これどうぞ。秋野菜のピッツァですぅぷ」
「当然のように超おいしそう」
差し出されたピッツァにはふつふつチーズとナス、トマト、オクラの鮮やかなコントラスとが輝く。どの野菜もチーズとよく合う性格の持ち主ばかり。
これほどのピッツァを前にしてアルマの食欲が封印される。あとでどんなスイーツを食べたのか聞いてみよう。
でも今は熱々ピッツァ!
「ん~~~~まぁ~~~~いっ! なんだかナスがずいぶんとジューシーだな」
驚いて、アーディがなにか言おうとする前にベレッタが声を大にして先駆ける。
「そうなんです! 乱切りにしたナスを出し汁に浸けておひたしにしてあるんです。じゅわっと旨味が口いっぱいに広がって、今までに食べたことのないピッツァなんです!」
「おひたし……? ナスに出汁を吸わせたということか。面白い工夫だな。メリアローザで一般的な方法なのか?」
「いえ、すみれのアイデアです。いろんなピッツァが食べられて幸せです♪」
「まったくだ。サマーバケーションでみんなで作ったピッツァを思い出す。来年もピッツァ作りはレクリエーションのひとつとして組み込むつもりだ」
「それは素敵なアイデアですね! 来年の夏季合宿も参加したいです!」
「来年は倍率が高くなりそうだ。料理の噂が音速で伝わったからな。すみれのおかげで飯マズ原因を改善できたから、彼女がいなくてもおいしい料理が作れるようになった。本当に感謝しかない。おかげで寄宿生たちの士気を高く保つことができた。できれば彼女には来年も参加してほしいものだ」
楽しかった思い出を胸に、楽しそうにランチを食べるすみれを見ると彼女の愛おしさに癒される。
これを聞いたアルマが忘れかけた記憶を掘り起こさせた。
「来年は鶏じゃなくて豚の解体をするかもしれませんよ?」
「食材が新鮮なことは大切なんだが、その場で処理するのは……ちょっと…………」
生々しい過去を思い出しながら、楽しそうにランチを食べるすみれを見ると、彼女の料理人魂を尊敬せずにはいられない。
でもさすがにビーチで屠殺はレベル高すぎなので、冷凍保存した食肉を用意していただきたい。




