異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 21
「魔法盾! 肉体超強化! 衝撃!」
前方に5枚のマジックシールドを展開。魔法攻撃を防ぐための魔法の盾。術者の練度が高ければ物質的な攻撃への防御も可能。今回は防御と同時に突進の勢いを殺す役割を与える。
それにしても恐ろしい勢いで破壊してくる。一枚破壊するのに1秒もかからないとは……。
ハイパワードで肉体強化をして攻撃に備える。同時に、盾を殴るように押し出してインパクトの魔法でいくらかの衝撃を相殺する。
動きを止めるだけでいい。
それさえ叶えば、レオさんが倒してくれる。
倒れて起き上がった彼の瞳は死んでいない。
まだ手がある。これさえ決めれば勝てるって顔だ。
ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
隕石でも落ちて来たかのような衝撃が走る。
衝撃を散らす魔法をかけてなかったら失神していたかもしれない。
押し込まれる。なんて力してんだ。
負けるな、私。
私はベルン第一騎士団長。シェリー・グランデ・フルール。
「私の後ろにいいいいいいいいッ! 行かせるものかあああああああああッ!」
押し返せ!
押しとどめろ!
牛畜生に好き勝手させてなるものか!
押しとどめる最中、こいつは頭を前に突き出すと同時に、意識は泥沼から這い出たレオさんにある。
この野郎、まさかカウンターを狙ってるのか。警戒しているのか。なんてやつだ。挑発に乗っていながら頭はクールじゃないか。歴戦の冒険者が苦戦するわけだ。
このままで大丈夫か?
そう何度も詩織の挑発に乗るとは思えない。
カトブレパスだけじゃない。一般的な魔獣だって何度も挑発の魔法はかからない。
きっとこれが最後のチャンスだ。
仕留めてくれよ、レオさん!
私は仲間を信じて勝鬨を待つだけ。
サンジェルマンさんも、悔しそうにするクロもカトブレパスの足止めに専念する。
レオさんは真剣な表情で、口を真一文字に結んで狙いを定める。
ターゲットはレオさんの警戒を怠らない。
狙撃手が引き金を引いた先は――――私の背後に隠れる詩織だ。
彼女をまっすぐに見つめて拳銃を構えた。
とち狂ったのか?
否。撃鉄は既に起こされたのだ。
ふと、私の口角が上がる。これで決まった。そう確信してしまったからだ。
刹那の時も狂わない。
レオ・ダンケッテ。ベルン第三騎士団副団長。
引き金を引き、弾丸が発射される。
まっすぐに向かう先は私の背後。
そうなると、カトブレパスの意識はこうだ。
『飛び道具での攻撃を全く見当はずれの場所へ放った。あと少しで盾を突き飛ばせる。そうなれば、嘲笑女を踏み殺して次は飛び道具男だ』
自分の勝利を確信した瞬間、カトブレパスの意識は途絶え、体は大地に倒れ伏した。




