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まさに兵器 1

ついに鯨肉が手に入ったのでロースト肉を作って食べました。

結果、めっちゃ美味かったです。想像以上に鯨の肉、主に鉄分の味が強く、相当にすり込んだ塩と胡椒の味がかすむほどでした。今度は両面塩コショウ漬けにしてみようと思います。


本作の登場キャラクターであるティレットはアナログゲームが好きな設定です。

もろに作者の趣味を投影したわけです。時系列的にフラワーフェスティバルまで時間があり、日常パートに入る予定です。なのでどこかで彼女たちにボードゲームなんかをしてきゃっきゃうふふしてもらおうと思います。しかし既存のボードゲームを使うと権利関係があれやこれやしてしまうので、自作しようと思います。なので小説の更新が遅れますことをご了承下さい。

チェスとかトランプでよくない? と思う方もいらっしゃると思いますが、作者は本格的なボードゲームで遊ばせたいのでちょっと本気出そうと思います。





以下、主観【シェリー・グランデ・フルール】

 翌朝、私は見慣れない部屋で目覚めた。薄い緑色を基調にした部屋は柔らかな印象。おしゃれな女の子の部屋だとすぐに分かる。

 すやすやと寝息をたてて眠るマルタ。私の部屋とは違うベクトル。かわいいという感性について浅すぎず深すぎず、他人に見せてもドン引きされないナチュラルな女子部屋。


 私の部屋も少しずつ改造していくか。しかし手に入れたぬいぐるみを手放す自分を想像してすぐに無理だと判断した。

 全てに名前まで付けて抱き寄せる日々を過ごした、いわば家族を手放すだなんてできない。

 もう末期だろうか。だとすればこのまま独り身で死ぬしかないかもしれない。


 自分と他人を比べて言いようのない、終わってる感を感じる。だからこのことは頭の隅っこに追いやって、なんでマルタの家に厄介になってるのかを考えた。

 理由は明白。彼女の運転する暴走車の圧力に恐怖して失神したのだ。

 騎士団長なのに情けないって?

 私だって人間だ。ジェットコースターより速いスピードをレース用コースとはいえ、ほぼ無防備で体感させられたら死を想像するのは仕方がないだろう。


 あ、とりあえず私、生きてるよな。

 エクトプラズムしてないよな。

 体は透けてない。もう1人の自分がベッドで寝てるということもない。心臓は動いてる。脈はある。うん、大丈夫そうだ。


 なにせ時速400kmの世界。体中の血液が背中に叩き付けられて血液循環が正常に行われない。だから次第次第に意識が薄れていく。

 反重力魔法で対抗してみたが、やっぱり人間が作ったものより自然のもたらす力のほうが強く、力負けしてしまった。

 絶命はしなかったものの、意識が途切れたというわけです。


 お酒も飲んで余計に酔いも回って…………そういえば、マルタもお酒飲んだよな。

 度数の弱いものばかりを選んでたはずだけど、結構な数を飲み下したはず。

 うん、よし、忘れよう。幸い、ポリスメンに捕まらなかったし。っていうか、時速400kmで運転してる運転者が飲酒運転してるとは思わない。そもそもそんな速度の車を止められる者などそうそういないか。


 道中はどうあれ、ベルンまで送ってもらった恩は返さねばなるまい。

 おかげさまで意識ははっきりしてる。飲酒規定を守ってるから体調も万全。


 飲酒規定とは、15歳(成人)した時に全ての新成人はアルコールのパッチテストを受け、自分の飲酒量を決定する。

 アルコール度数とそれに伴う1日あたりに飲んでもよい量を数値にして見える化する制度のことだ。

 これはアルコールの過剰摂取による事故や事件の防止、体調管理の向上に努めようという取り組みである。

 お店で酒類を飲む、または購入する時にはパッチテストの際に交付される証明書の提示が義務付けられており、不所持の場合はお酒を手に入れることはできない。

 証明書に記載されている上限を超えた量の販売・飲酒が発覚すれば、重い罰則もあるという、かなり強力な制度なのだ。


 この制度が施行されて、飲酒による犯罪や事件が激減した。とはいえ、圧力に屈しまいとするのが人間なようで、どうにかこれをかいくぐらんとする輩がいるものだから困りもの。

 こっそり密造したり、ラベルの表記を中身のアルコール量より少なく見せたりとか。

 彼らのその逞しさをもっと別のベクトルに使って欲しいものである。


 そんな飲酒規定のおかげもあり、夜にお酒を飲んでも朝を快調で迎えられた。

 そろそろ8時だ。マルタを起こしてモーニングコーヒーとしゃれこもう。


 背伸びをしてベッドから抜け出し、床の上で毛布にくるまって寝息を立てる彼女の肩を揺すろうとした時、本能に訴える鳴き声が聞こえた。

 幸せそうにむにゃむにゃするマルタの前に、柔らかいタオルの敷かれた底の浅い皿が置かれている。布がもぞもぞと動いてにゃあにゃあと声がした。

 ひょっこりと顔を出したそれは愛らしい子猫。明るい茶色と白い毛並みがもふもふとしていて、つぶらな瞳に釘付けになってしまう。

 しかも小さい。生後2週間ほどだろうか。手の平サイズの子猫ちゃん。かわいいっ!

 目も耳も口も鼻も小さい。小さくて愛らしい体を一生懸命に伸ばして何かを訴える。お腹が空いてるのかな。しかし何を食べさせればいいんだ?

 おっと、机の上にメモ書きを発見。


『私がまだ寝ていたら、冷蔵庫に置いてあるご飯とミルクを与えておいて下さい』


 言われるがままにしてみると、小さなお皿には少量のコーンフレークのようなものと、小瓶に入れられたミルクが置かれている。これを与えればいいのだな。緊張するな。

 にしても餌を与えようにもタオルの上では不安定だ。つまりこれはあれか。この子を持ち上げて一度外に出してやらないといけないのか。めちゃくちゃ緊張するな。


 こんなに緊張するのはいつぶりだろうか。騎士団の入団試験だって、これほどまでに心臓をバクつかせたことはない。

 魔獣の襲来で防衛戦になった時でさえ冷静だった。戦闘においては冷静でいられることは良いことなのかもしれない。なのに、今ここにいたって息が苦しい。


 母猫が子猫の首元を咥えて運ぶ動画を見たことがある。首元をつまめばいいのだろうか。力加減が分からないからやめておいたほうがいいだろう。

 とすれば手の平に乗せるべきか。乗ってくれるだろうか。ぜひに乗って欲しい。超緊張する。


 手を差し伸べると、指の先をちょんちょんとつつき、よちよち歩きで手の平に乗っかってきた。

 ふわぁっっっっっ!

 ふわふわのもちもちできゃわいいっ!

 や、やばいよこれ。かわいすぎるよこの子。お持ち帰りしたい!


 餌の入った小皿を前に差し出すと、一心不乱に舌を伸ばしてあむあむと食べ始めた。

 これが癒し。なんてかわいらしいのだろう。ミルクをぺろぺろと飲む姿も愛らしい。

 なんということか。もはやこれは兵器だ。


 夢中になる私の背後でマルタが覚醒した。

 たぬき寝入りを決め込んで、私と子猫の様子を眺めていたなどとはつゆ程も思わない。

 してやったり、という気持ちを隠して、まるで今起きましたといわんばかりの演出をする。


「んむぅ……あぁ、シェリーさん、おはようございまぁす」

「おはよう、マルタ。それと介抱してくれたみたいで助かったよ。それより見ろ。めっちゃぺろぺろしてる。かわいいな。すっごくかわいいなっ!」


 完璧にマルタの思うつぼ。


「この子は生まれた時からすぐにうちで世話をしてるんです。だから人間に警戒心がないので、すっごく懐いてくれますよ。あっと、ご飯をあげて下さってありがとうございます。この子は元気なほうで、よく食べてよく飲むのですが、まだ排泄がうまくできないので手伝ってあげて下さい。やってみますか?」


 ハンカチを敷いて横に寝かせ、促されるままお尻をぽんぽんと軽く叩くと、じょわぁーっとおしっこが流れ出てきた。

 本来ならば親猫がお尻を刺激してあげて排泄を促すのだそうだが、いない場合は人間が親代わりに手伝う。

 世話がかかるほどかわいらしい。なるほどこういうことか。愛着がわくなぁ。


 あごの下を撫でてあげると、気持ちよさそうににゃあにゃあと鳴く。お腹を撫でてやると、仰向けになってゴロゴロと転がってリラックスした。

 本当にかわいい。かわいいとしか言ってない自分がいることに気付かないほどに夢中になってしまう。


 少し遊ぶと疲れてしまったのか、目を細めてぐっすりと眠ってしまった。

 このくらいの子猫は1日の8割は寝て過ごす。少し残念ではあるが、どこかで見切りをつけないと永遠に遊んでしまいそうできりがない。

 ちょうど良い頃合いと言えよう。ある意味、空気が読める子猫と言えなくもない。

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