異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 16
何度か森を入って抜けてを繰り返し、次に森へ入ろうとした時、詩織がわくわくしたようなハツラツとした声色とともに手を挙げた。
「ここから先、カトブレパスが生息する場所になります。やつらは個体で生活していて、人間との戦闘になっても同族を援けようとはしません。ただ、戦闘能力は極めて高く、かなり賢いので注意してください」
「案内をかって出てくれてありがとう。今回、詩織は非戦闘員という位置づけだから、私の後ろに隠れていてくれ。私が必ず守るから」
「っ! よろしくおねがいします!」
前回の異世界渡航の際に知り合った五十嵐詩織。呪いの甲冑を身に着けて道案内をしてくれた。本人は戦うと言って聞かなかったが、今回の目的はレオさんの実力をクロに見せつけること。邪魔というわけじゃないが、今日は私の後ろでおとなしくしていてもらおう。
なにより、手の内を知らない少女がいても足手まといだ。さいあく、彼女を危険に晒す可能性もある。
彼女には星の再生という重要任務がある。そのために、こんなところで死なれるわけにはいかない。
ではなぜ彼女が危険なモンスターのいるエリアの案内役をかって出たのか。
暁が言う、『討伐以外で採取された毛皮』の正体を知ってるらしい。採取方法については当然、彼女の利権を守る意味でも秘密であるので私たちは知らない。
「カトブレパス。ぶっ殺す。ぶっ殺す。ぶっ殺す…………」
最近負け続きのクロの殺気がヤバい。
「血清を貰って、毒耐性を付与してもらったとはいえ油断はしないように。放出系魔法は使わないということだが、高い防御力と突進攻撃にはくれぐれも気を付けてね」
サンジェルマンさんは注意事項の確認を怠らない。警戒はいくらしてもし足りないくらいだ。
「まともに入りそうな攻撃が打撃だけっていうのは、随分の渋い相手ですね。俺の弾丸が通用するかどうか……」
「レオさん。今回はクロに貴方の戦闘能力を示す機会です。リーダーはレオさんなので、存分に我々を使ってください」
「えぇー……それはもう昨日のやりとりで終わったと思うんだけど……」
「サンジェルマンさんじゃくて、レオさんに手綱を握っておいてほしいんです。クロは貴方のフィアンセなんですから」
「そうか……俺が昨日、暁にハメられたことを知らないから…………」
「ハメられた? なんのことですか?」
「いや、もういいの…………」
「そ、そうですか……?」
もういいならこれ以上は聞くまい。
さぁ、気を取り直して前進再開。




