異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 15
「ああーーーー…………昨日は人生で一番大変だったぁーーーー…………」
朝だというのに、なぜかわからないがものすごく疲れた顔をしたレオさんが現れた。
そうだ。クロを御するためにレオさんが彼女に勝利しなくとも、強者だと理解できれば彼の言うことを聞いてくれるのではないだろうか。
くわえて、既に敗北したサンジェルマンさんはともかく、私も強者であることを示すことができれば、アンチクロス・ギルティブラッドの手綱を握れるかもしれない。決してサディスト的な意味ではない。ベルンを守護する者として、危険の芽は摘み取っておかなくてはならないのだ。
「相談なんだが、昨日の暁の話しによると、レオさんがクロより強いことを証明しないといけない。こちらとしてはサシの勝負は勘弁してほしい。クロはレオさんより強いからな。だからどうだろう。モンスター討伐に赴いてレオさんが強者だということを示すということで、彼女の手綱を握ってもらう、というのは」
「え、レオさんは昨日クロと――――ごほんっ! ええと、そうですね、クロはともかく、レオさんがそれでよければ」
「無理を言ってしまってすまないな」
「いえいえ。ですが緊急転移のマジックアイテムは必ず持って行ってくださいね。命を落とされても責任はとれませんから」
「もちろんだ。レオさんとクロ、それとサンジェルマンさんに声をかけてきます」
昨夜の風呂場で暁が策を弄したなど知る由もなく、私はレオさんとクロ、サンジェルマンさんのもとへかけよる。
「レオさんが強者であることをクロに示すため、ダンジョンでモンスター退治をしてよいということですが、お二人はどうしますか?」
「「行くっ!」」
少年の心を忘れない二人は即答だった。
♪ ♪ ♪
明るい森の入り口とはうって変わって、森の中に吹く風は静かに涼しい空気を運ぶ。落葉した葉はあれど、森はまだまだ生命に満ち溢れようとするのか、太陽を覆い隠す緑の葉が多い。
ピクニックなら木漏れ日にうつつを抜かすところだろう。討伐となると、ゆらめく光の芸術が目障りで仕方がない。
神経を張り詰め、森の中でわずかに揺れる景色とかすかな音に注意する。
メインの戦闘員はサンジェルマンさん、レオさん、クロ、私の四人。案内係に五十嵐詩織。控え兼殿に夜咲良桜とスカサハが影に潜む。




