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異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 12

 フライの魔法で空を飛ぶ。ベルンではなかなかできる体験ではない。

 吹きすさぶ風が心地いい。このまま全力疾走したい気分だ。

 岩山に咲き誇る高嶺の花めがけて飛翔しよう。いっそこのままゲットしてケルベロスに渡して、使い魔契約してゴールインだ!


 素敵な妄想に胸膨らませるも束の間、フライの魔法は高度を失ってインヴィディアさんたちがいる岩山の麓に緩やかに落下した。

 彼女たちからすれば、どうして自分たちのところへ舞い戻って来たのだろうと首をかしげるほかない。


「急にフライの魔法の出力が途切れて不時着しました!?」


 まさに不時着。エンストするように出力が急減速していった。


「ということは、この鉱石は直接触れてなくても魔力を霧散させることができるのですね。つまりフライの魔法でショートカットはできない、と。ケルベロスを使い魔にするための試練なので簡単ではないと思っていましたが、まさか魔法封じとは。これは厄介ですね」

「物理的な準備をしないといけないってことね。でもそんなことしたら、すぐに暁ちゃんに勘付かれてしまうわ。どうしましょう?」


 ぐぬぬ。悠長に登山グッズを揃えていたら他の人にバレてしまう。

 かといって、無防備で超急勾配の岩山を登るなど無謀。

 かくなるうえは!


「内燃系魔法はキャンセルされないようなので、力業で登るか、力業で掘削して岩山に階段を作るか、ですね!」

「後者はやめておいたほうがいいのでは?」

「前者が現実的だけど、命綱がないと……」


 インヴィディアさんの心配はもっともだ。でも個人的にはそんなに難しいとは思えない。

 いくら急勾配とはいえ、横幅はかなりのもの。ところどころゴツゴツしていて足場はある。

 命綱なしの超幅広ロッククライミングと思えばいけそうな気がするっ!


「その考えで行ったら死ぬわよ?」


 齢1000を超える大悪魔の言葉の重みがすごい。

 重み。そうか。その手があったか!


「逆転の発想を思いついてしまいました! 登るのではなく、降りればいいんです?」

「と、おっしゃいますと?」

「あらかじめ岩山より高い位置にフライで飛んで、近づきながら降下すればいいんです。これなら登る労力もいりませんし、てっとり早くお花を摘みにいけます!」


 エクセレントなアイデアがフォールンダウンした!

 自信満々な笑顔で二人の顔を見るも、どうやら気に食わないご様子。


「それはいいアイデアかもしれないけれど、どのタイミングでフライの魔法が無効化されるか分からないし、降下したとして、無事に着地できるか心配だわ。肉体強化(パワード)は有効みたいだけど、落下エネルギーってとても強いから」

「ぐ、ぐぬぬ……着地のことを考えていませんでした……」

「ほ、本当ですか……?」


 リリス姫様に呆れられてしまった。このままではアホの子だと思われかねない。

 既にアホの子認定されたことも知らず、私はない頭をひねる。体がくねる。心が引きちぎれそうになるっ!


「なにも思いつかないっ! シンプルに力業が近道なのでは?」

「もう少し考えてみましょうか」


 はやる私の心にインヴィディアさんがブレーキをかける。

 熟考は大事。物事を順序だてて考えることはもっと大事。

 予備の水筒とスイーツを手に作戦会議だっ!


「日中にしか咲かない岩山の白い花は約2500メートル先の岩肌に群生しています。岩山を形成する鉱石は魔力を霧散させる性質があります。傾斜はキツイですが視界は良好です。私はすぐにでもピウスと一緒に暮らしたい。うん。白い花めがけてダッシュが正解な気がしてきました!」

「もう名前まで決めたのね。でもそうね。なんだかんだ言って、状況的にまっすぐ登るのが一番いいのかも。傾斜が強いとは言ってもネズミ返しになってるわけではないし。あとは体力と、滑り止めの利く靴と手袋を調達しておきましょう。そのくらいなら怪しまれずに手に入れられると思うわ」

「そうと決まれば物資の調達です。ピウスのところへ挨拶へ行ってお店を回りましょう!」


 思い立ったら即行動。

 兵は拙速を尊ぶのです。

 時間は有限。ピウスのところへダダダダッシュ!

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