異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 11
クッキー、りんご、水筒にはハーブティー。
質素でエレガントなピクニック。さっそく夢が叶っちゃいました。
そして生まれて初めての――――りんごまるかじりっ!
「はむっ! しゃくしゃくしゃく。ごくん。おいしい! わたくし、りんごを丸かじりしたの、生まれて初めてです!」
「え、そうなんですか!? いつもは切り分けて食べてらっしゃるんですか?」
「はい、切ってもらったものか、アップルパイなどに加工されたものばかりで、こういうふうにそのまま食べるのって初めてなんです。すっごく新鮮です♪」
そう言うと、絶滅危惧種を見るような悲哀に満ちた視線が向けられた。
さて、お腹が満たされたところで登山ルートを確認しよう。メリアローザにいられる時間が短いからと言って、ぶっつけ本番で登山するのは危険すぎる。的確に、スピーディーに、迅速に、大胆に作戦を練っていきましょう。
「それではまずは、ゆっくりと一歩ずつ、フライの魔法を使ってどこまでショートカットできるか実験しましょう!」
「体力的な問題もありますから、可能な限りは楽をしましょう」
「落下すると即死だから、魔力配分と体調管理にだけは気を付けてね。念のため、私は下で待機してるから」
「よろしくおねがいしますっ! それでは、レッツ登山!」
と、意気込んで、一歩目を踏み込んだ瞬間に違和感が走った。
突き出した小さな岩を右足で踏みしめて、元気よく空へ飛び出そうとするもフライの魔法が発動しない。
いや、この感覚はそうじゃない。靴に集中させた魔力が霧散して消失したような感覚。
もう一度踏み込んでも同じように消えてしまう。
まさか、この岩石に魔力を霧散させる効果が?
拾いあげて、魔力を流してみると予想通り、霧散して消えてしまった。
なんてこった!
「これでは魔法が発動できないじゃないですか! フライの魔法が使えない!」
「「えぇ!?」」
二人も同様、岩を持って魔力を流すも霧散して消失。
不幸中の幸いなのか、インヴィディアさんが掛けてくれた補助魔法の効果は残っている。
放出系の魔法や岩に触れる魔法はダメなのか?
それならば、岩から離れたところでフライの魔法を発動させればいいじゃない。
「ちょっと面倒ですけど、岩山を降りて魔法を発動してきます」
飛び降りて、三度フライを発動。今度はちゃんと発動した。やっぱり岩山の影響で魔法が使えなかったらしい。なんという魔術師殺しの岩石よ。アルマちゃんが見たら岩山が灰燼に帰すまで物理魔法をぶち込みそう。




