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異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 10

『ま、待って! 呪いを解くために必要なものがあるんだ』

「呪いを解くために必要なもの? 儀式に使うためのマジックアイテムとか、触媒のことでしょうか」

『そ、そう、それ! ここから見える大きな岩山の山頂付近に、日中しか咲かない白い花、『スタァホワイト』っていう花があるんだ。呪いを解くために必要なんだ。道のりはとても険しくて、とってもたいへんだ。ケガをしたらたいへんだよ』


 声のトーンが少しずつ弱くなる。同時に、表情も次第にしおれていく。

 彼は使い魔にしてもらうことを断られると察して、それでも私のためを思って忠告してくれた。

 なんて優しい子なんだろう!

 ますます使い魔に、家族にしたい!


「貴方はとても優しいのですね。わたくしのことを気遣ってくださってありがとうございます。でも大丈夫。それはインヴィディアさんに採って来てもらおうと思います♪」

「急に来たわね。まぁ、お姫様を危険な目に遭わせられないし、私ならすぐにでも採取できるわ。一輪でいいの? 首が三つだから三つ?」

『あっ、やっ、それは、ええと…………そうだ、僕を使い魔にしたいっていう君が採ってこないといけないんだ。呪いを解くための、手順? に必要だって、獣の神様が言ってた、と、思う。多分』


 なにか後ろめたそうな顔に見える。きっとうろ覚えの記憶に自信がないのだろう。いつかは分からないが、呪いを受けたのは相当昔の話しのはず。記憶が曖昧なのは仕方ない。

 が、とかく、私が採ってくれば問題解決。もし記憶違いでも、なにかしら解決方法はあるはずだ。

 善は急げだ。時間は有限。陽のあるうちに採取せねば!


「分かりました。それでは少し待っていてくださいね。必ずお花を採ってきます!」


 ♪ ♪ ♪


 やってきました、三日月岩。メリアローザでなんて呼ばれてるか知らないが、とにかく三日月っぽい形なのでそう呼びます。

 遠目に見るとそこまで大きくなさそうだった。近づいてみると、首が痛くなるほど巨大だ。高さにして3000メートルくらいありそう。これを登って行くのか。随分と骨が折れそうだ。


「千里眼で見たけど、花が咲いてる地点はここから直線距離で2500メートルほどね。平坦な道のりならともかく、超急勾配の坂となると登山するのもたいへんそう」

「途中まではなだらかですが、中腹あたりから傾斜45度を超えてます。登るというか、這い上がらないといけませんが」


 インヴィディアさんもリリスさんも、どうして山があるからって山を登ろうだなんて考えるのでしょう。そこに山があろうとも、わざわざ登る必要はなくってよ?


「高い山があるのなら、フライの魔法で飛んでいけばいいじゃない!?」

「それはそうだけど、急に上昇すると高山病の危険があるからゆっくり進んでね。周囲の気圧を一定に保つ魔法は使える? 私は使えないから、自力でなんとかしないといけないのだけど」

「気圧を一定に保つ魔法! 使えません!」


 リリスさんに目配せ。首を横に振られた。彼女も使えないようだ。

 気圧操作の魔法。あるいは、気圧を調整する魔法。習得自体は中位程度であれど、自然の力とは絶大かな。自然環境の影響を永続的に受ける魔法は維持することが超難しい。登山家でも常に発動はしない。高山病で倒れた人への応急措置として使われる程度だ。


「とはいえ、ある程度はフライの魔法で楽できるはず。下調べついでに軽く飛んでみます」

「なにかあったら困るから全員で行きましょう。それぞれに発見があるかもしれないわ」


 ということで、岩山をよじ登り、ところどころ苔の生えた場所を掴んで登り、三日月岩のお腹に到達した。風で飛ばされた砂塵が下地となり、鳥たちが種を運び、草花が生い茂る。景色も素晴らしきかな。楽園エリアの全体を見渡せるこの場所でピクニックがしたい。

 岩山の影に隠れて見えなかったが、東側に大きな湖がある。太陽の光を受けてきらきらと瞬く姿は旅行雑誌で見た観光地のそれ。

 全力で、誰の目も気にすることなく、海で泳いでみたい。

 バーベキューしてみたい。

 サマーバケーションではすみれさんの料理が絶品だったと聞いた。

 バーベキューがしたいっ!


「私もバーベキューがしたいです!」

「今度、暁さんに提案しましょう!」

「お忍びで来てること、忘れないでね? まぁでも、ケルベロスを連れ帰った瞬間にバレるけど」


 立場上、水を差さないといけないインヴィディアさんに喝!


「あとのことは今はいいんです! その時はその時です!」

「気持ちは分からないでもないけど、少しは後先考えてね?」

「まったくもう、インヴィディアさんったら心配性なんだからぁ♪」

「……………………」


 どうしたんだろう。沈黙が長い。そうか、そろそろ小休憩を取らないと。ここまで随分と歩いたからな。ひと息つきましょう。

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