異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 8
のそりのそり。おそるおそる。わくわくしながら近づく私の肩をリリスさんが掴んで待ったをかけた。
「ウララさんの占いがよく当たるのは存じております。しかし、相手は未知の存在。警戒するに越したことはありません。もしかすると噛みついてくるかもしれないので、防御魔法と補助魔法をかけておきましょう」
「そうね。リリス姫の言う通り、もしかすると運命の出会いっていうのがわんちゃんのことじゃないかもしれないし」
「はっ! たしかにおっしゃる通りです。わたくしとしたことが、ついつい先走ってしまいました」
「ええ、それじゃ、魔法をかけるから手を貸してね」
インヴィディアさんの掌に私たちの手が乗る。
細くて繊細で、だけど働き者の温かな手。インヴィディアさんが他者を思いやれる心の強い女性ということが伝わった。
鉄壁
|判《ジャ》断《ッジ》力《メン》向《ト・》上
全属性耐性
空間固定
魅力向上
身代わり
観察眼
幸運上昇
祝福
なんだか分からないけど、すんごいたくさんの補助魔法をかけてもらっちゃった。
インヴィディアさんがこれでよしと言うのなら、きっと大丈夫に違いない。
さぁさぁそれでは、未知との遭遇としゃれこみましょう!
魔法をかけてもらって、ケルベロスに振り返るとお昼寝から覚めてこちらを見ていた。
見慣れない類人猿に興味を持ったようだ。三つの首と六個のおめめが私たちを覗き見た。
これはなんだか、好意的なスキンシップができる予感!
「はじめまして。わたくしはシャルロッテ・ベルン。貴女のお名前を聞いてもよろしいですか?」
『……………………』
返事がない。ただのわんちゃんのようだ。
「姫様、わんちゃんに話しかけても人語を理解できないのでは?」
「はっ! たしかに。ではどうしましょう。普通のわんちゃんと同じようにスキンシップすればいいのでしょうか?」
「好意を持って接すれば伝わると思うわ。ひとまず、頭をなでなでしてあげてみてはいかがでしょう。少なくとも吠えてこないということは、あちらは全力拒否モードではないはずです」
「いいですね! やってみます!」
ゆっくりと近づいて笑顔を向ける。
頬に腕を伸ばし、ふさふさの毛並みをなでなで。あんまり大きいからおでこに手が届かない。
仕方ない。頭は諦めて次の頭の頬をなでなでしよう。
なでなで。
ふさふさ。
つやつや。
うぅむ。毛並みのケアが十分でないせいか、想像していたもっふもふとはほど遠い。
使い魔になったらしっかりと体を洗ってブラッシングしてあげよう。




