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異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 7

 薔薇の塔36層【ハニカムウェイ】。

 六角形の区画ごとに全く違う景色が広がるダンジョン世界。ゲート入り口は森林地帯。ブルーラプトルと呼ばれる中型恐竜が跋扈するエリア。そこから東へまっすぐ進むと楽園エリアと呼ばれる場所に出る。

 森林エリアと楽園エリアの境がはっきりと分かる。隣同士のエリアのはずなのに、植物の植生も、風向きも、土の色も違う。まるでパッチワークのようにつなぎ合わせた世界のよう。別の土地を切り取って、それらをたくさん並べて揃えたような印象を受ける。


 明るく開けた楽園エリアは色とりどりの花々に満たされて、本当に楽園のような景色。翻って、来た道を見ると当然、森林エリアが広がる。背の高い針葉樹が立ち並ぶ世界が立ちはだかるように生い茂る。


「どういう理屈で大地が成り立っているのでしょう。まるで張り合わせたかのような景色です。境界線にグラデーションがありません。謎すぎます。これがダンジョン。謎で謎を煮詰めたような謎です」

「本当に不思議な場所だわ。でも今は放っておきましょう。危険な謎でないのなら、全ては素敵な謎に違いないわ」

「ですねっ!」


 分からないことを考えても分からないから考えるのはやめておきましょう。

 そんなことより楽園エリア。遠くには三日月が落下したような姿の山がひとつ。足元にはなだらかな山脈が寝そべる。

 眼前には花々を飛び回る蝶々の群れ。足元には小さな命が煌めく。小鳥のさえずりが心地いい。

 自然と小動物と、美しい虫たちの楽園。


 ここに素敵な出会いがあるという。


 私を待つ素敵な出会いとはどこにあるのだろう。

 あたりを散策して、それらしい影が見えた。

 なんてこった。とても楽園に似つかぬ地獄の番人。

 いや、地獄の――――番犬。


「わぁ……体が一つなのに首が三つのわんちゃんがいますね」


 リリスさんがインヴィディアさんの後ろに隠れてへっぴり腰になる。

 仕方ない。洞窟の中で居眠りしてるから全体までは分からなくても、頭の大きさからするに全長3メートルはあるように見える。


「あらあら、まさか三つ首の大きなわんちゃんがいるだなんて。これは完全に想定外だわ。私も1000年生きてきたけど三つ首の犬は初めて見たわ」


 インヴィディアさんはとても楽しそう。

 だけど……


「この子が私の素敵な出会い! 絶対に家族にします!」


 私はもっと興奮しているっ!

 一度に三つの頭をなでなでもふもふできるなんて素敵!

 大きいから背中に乗ってお散歩できる!

 素敵要素しか備えてない!


「どうしましょう! どうやって連れて帰りましょう!」

「連れて帰ったらダンジョンに入ったことがバレちゃうけど?」

「もうバレても構いません! あの子を私の使い魔にします!」

「動物を飼うのは命を扱うこと。責任重大よ?」

「わかってます。使い魔になれば生命活動のエネルギーに魔力を代用できます。それにわたくしはお姫様。お金の心配はありません。それにお金がなければ事業を興して作ります!」

「すごい行動力。お姫様っていつの世も、どうしてこんなにアグレッシブなのかしら……。それにしても、まさかケルベロスだなんて。素敵な出会いって言うから、てっきりフェアリーか精霊か、そういう手合いだと思ってたのに」


 保護者であり大悪魔のインヴィディアさんの想像を超えるダンジョンに興味が尽きない。

 さて、しかし今はケルベロスをどうやって手なずけるかを考えよう。

 意志疎通ができたらいいのだけれど、それができたら苦労はしない。

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