異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 3
防具であれば鉄の鎧が一般的。特に高級なものは軽量化と強度強化の魔法を施された防具。
まぁ、こちら側の世界では一般的な防具の部類に入るみたいだけど。
私の疑問に暁さんは実演で答えてみせる。
「少量で構いません。ローブに魔力を流してください。私が軽く叩きますので、どのくらいの強度があるか体験してみてください」
「わかりました。ぜひお願いしますっ!」
マジックアイテムの実演。ちょっとわくわくです!
ローブを羽織って魔力を込める。ローブ全体に私の魔力が沁み込むように広がった。
「準備できました。いつでもどうぞっ!」
「了解です。それと、そんなに構えなくて大丈夫ですよ」
鍛冶士である暁さんを意識すると不意に体が強張ってしまった。
失笑されて、ちょっと恥ずかしくなる。あらためてローブに拳が当たった。こつんこつんとノックするように叩くと、布に拳を当てたとは思えない硬い音が響く。
「布に触れられたとは思えない感触! まるで鎧越しに小突かれたような印象です」
「限度はありますが、衝撃の強さによって強度が上がっていく不思議防具です。まぁ、これのおかげで斬撃も射撃も弾かれてしまうんですけどね……。魔法防御力もあるので厄介ここに極まれり、です」
「これが防御力の正体ですか。敵に回ると厄介ですね。これを異世界間交流の交易品にされるのですか。斬撃も射撃も弾き返すローブだなんて、おくらのご予定であらせられますか?」
斬撃も射撃攻撃も、魔法も防ぐだなんて便利すぎる。
さぞお高いに違いない。
「実はまだ調達方法が確立されてなくて、お値段は決まってないんです。冒険者にも配布したいので一定量が確保できてからの供給になると思います。なるべく早く数が揃えられるように努力しますね」
「そうなんですか。無理なさらない程度に頑張ってくださいっ!」
「おや、姫様、おはようございます。なんの話しをされてらっしゃったのですか?」
ばっちりと身なりを整えたシェリー騎士団長が朝食を持って現れた。
「暁様にマジックアイテムを見せていただいておりました。ものすごい防御力を持ったもっふもふローブです!」
「ものすごい防御力のもふもふローブ……?」
シェリーさんの頭の上に疑問符が躍る。
よく考えてみればもふもふなのに防御力が高いって意味が分からない。
というわけで、シェリー騎士団長にも交易品の性能を確かめていただきましょう。
「――――信じられない性能だ。ひとまず、腕巻きと足首に巻く分だけでも優先して作ってほしい」
「腕と足に巻くんですか?」
「四足魔獣は細い部分に嚙みついてきますから。たいてい、腕と足首を噛まれます」
「な、なるほど。それは最優先ですね」
「腕と足ですね。加工前の在庫が少しあるので、いくつか用意しておきます」
「それは助かる。マジックアイテムも優秀だが、防具やルーン技術も視察したい」
「それでしたら――――――」
ここから暁さんとシェリーさんが仕事の話しに入ったので、リリスさんと合流して作戦を練ろう。リリスさんはキーパーソンのアンチクロスさんにアプローチしてる。
どんな話しをしてるのだろう。もう懐柔できたかな?




