異世界旅行2-3 待ちわびた時は眩しくて、遂に出会えて嬉しくて 2
お風呂から上がって食堂に入る。体がぽかぽかになったら冷たい飲み物がほしくなる。
ひんやりと冷やされた牛乳をぷはーっ!
朝食のトーストを食べながら暁さんに近づこう。暁さんをよいしょしながら愛嬌を振りまき、懐柔することで護衛役を桜ちゃんからクロさんへ変えてもらうのだ。
どういう理由をつけるのかは知らないけど!
暁さんは朝食を済ませ、冒険者の報告書の確認をしているようだ。
異世界間交流の大使たる私は公的にも私的にも冒険者に興味がある。
よし、ひとまずこれで会話を弾ませよう!
「おはようございます、暁様。それは冒険者様の報告書ですか?」
「おはようございます、シャルロッテ姫様。おっしゃる通りです。通常の案件は目を通すだけでよいのですが、今回のコレは難敵でして。要討伐対策案件なんです」
「屈強な冒険者様をして難敵とは。いったいどんなモンスターなのですか?」
暁さんの隣に座り、用紙に目をやると、討伐対象の特徴と戦闘記録が記載されている。
「カトブレパス。毒の息。毒の吐瀉物。毛皮は極めて魔法耐性が高い。見た目はふさふさだが、攻撃を与えた瞬間に鋼鉄のような強度になる。今回会敵したカトブレパスは全長およそ2メートル。常に単体で活動。非常に賢く、挑発魔法がほとんど失敗する。なんだかよくわかりませんが、とにかく毒攻撃持ちなうえに魔法物理防御が極めて高い、ということですか?」
「おっしゃる通りです。とはいえ、所詮は獣。なので火にかけると毛皮は燃えるのですが、我々としてはその毛皮が欲しいのです」
「毛皮に特徴があるのですか?」
「ええ、できることなら、カトブレパスの毛皮を異世界間交流の際の交易品にしたいと考えております。こちらに討伐とは別の方法で手に入れた毛皮のローブがあります」
暁さんはひまわりが刻印された牛革のおしゃれバッグから、ふっさふさの黒い毛皮のローブを取り出す。
もっふもふのふっさふさ。高級品に囲まれた生活を送る私には分かる。マット感最強の黒色、手触り、縫製から羽織った時の空気の溜まり具合まで、全てが超一流の職人技。
超欲しい!
けど、色が気に食わない……。
「素晴らしい手触りですね。でも、恐ろしいほど真っ黒ですね。黒というよりは、漆黒と言いますか。光を当てても光沢がないから、のっぺりとした黒色で、まるで夜闇のようです」
びっくりするほど黒い。
遠近感が感じられないほどに黒い。
黒というより、闇と表現したほうが適切なほど。
ただのお姫様の私にとって、ポジティブなイメージがほしいところ。黒はかっこいい大人なイメージ。それはそれで憧れるところがある。
でも個人的には白とピンクに染め上げたい。
「個人的には白とピンクのもふもふにしたいです。黒もかっこいいですけど、かわいいローブがいいですね♪」
そう言うと、暁さんは大きく笑って肯定した。
「そうですね。シャルロッテ姫様が着るなら明るい色合いがよろしいでしょう。こちらにありますのは、とりあえず冒険者用なのです。闇夜に目立たない漆黒加工を施してあります。夜に着ると本当に真っ黒で、目視で確認するのは困難なほどです。でも、カトブレパスの毛皮のローブは隠密活動をするためのものではないんです。純粋に防具としての運用を考えています」
「ローブを防具に?」




