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異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 55

「ハーブ畑でないとすれば…………一人暮ら、二人暮らしができる家を用意してほしいということかしら?」

「はーい、インヴィディアさんの回答権がなくなりましたー。それでは、クラリス。答えをどうぞ」

「ええーーーーーっ!」


 叫ぶも誰もフォローしてくれず、涙目のクラリスが大激怒して声を大にした。


「インヴィディアさんがコーヒーにばっかりうつつを抜かすのが許せないんですっ!」

「そんなことで怒ってたの!?」

「『そんなこと』じゃないです! 私にとっては、私にとっては大事なことなんですッ!」


 どうやらクラリスはコーヒーに嫉妬していたようだ。嫉妬の悪魔たるインヴィディアが彼女の嫉妬心に気付かないだなんて、笑えない冗談だわ。

 クラリスが思いの丈を打ち明けてくれる。私はそれを静かに受け止めた。


「私はインヴィディアさんのことが大好きで、ハーブのことも大好きで、貴女のためになりたくて……。だから私が淹れたハーブティーを飲んでほしいんです。わがままだということは分かってます。でも、私はインヴィディアさんにおいしいハーブティーを飲んでほしいんですっ! 私の真心を受け取ってくださいっ!」

「クラリス……っ! そういえば、コーヒーを飲み始めてからクラリスの淹れたハーブティーを飲んでないッ!? わ、私はなんてことを!」


 思い返してみれば、朝と3時のティータイム、それに夜、寝る前にいつも私のところに訪ねに来てくれた。


『ハーブティーはいかがですか?』

『今日はクッキーに合うローズヒップがあるんです』

『お疲れでしょうから、リラックスできるカモミールティーはいかがでしょうか?』


 嗚呼、なんてこと。私はずっと彼女の心の叫びを見逃した。

 私はクラリスに、愛する義娘(むすめ)に酷い仕打ちをした。

 なんて酷い親だろう。穴があったら埋まりたいっ!

 私は彼女を強く抱きしめて、涙を拭いてまた抱きしめる。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。これからはちゃんと貴女の気持ちを考えるから。どうか許してもらえるかしら?」

「もちろんですっ! でもインヴィディアさんがコーヒーが大好きなのは理解してますので、せめて二回に一杯はハーブティーにしてもらえると嬉しいです!」

「コーヒーとハーブティーを交互に飲んだら口の中がたいへんなことになりそうですけど」

「ちょっとアルマちゃん今はこっちにいようねー」


 ベレッタちゃんがアルマちゃんを引きずってどこかへ行ってしまった。

 たしかにアルマちゃんの言う通り、コーヒーとハーブティーを交互に飲んだらお口の中がたいへんなことになってしまうかもしれない。

 どうすればいいの!?


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