異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 52
以下、主観【インヴィディア】
きらきらカラフルなフルーツゼリーケーキ。
ナッツと粉砂糖たっぷりのシュトーレン。
どちらも本当においしそう。クラリスが私のために作ってくれたというのなら、よりいっそう、おいしく感じられるに違いない。
やっぱり秋のメリアローザは最高だ。メドラウトには四季がない。雨季と乾季が交互にやってくる。合間に春のようなのほほんとした陽気が差し込む年があるくらい。自然に恵まれてはいるけれど、秋になるとどうしてもメリアローザの料理が脳裏をよぎる。
だからこの時期になると、おいしい食べ物と素敵な景色を求めて小旅行に出かける。長く生きてきて、楽しみを多く見つけたけれど、中でも『食べる』ことは最大の娯楽と感じる。
今度、マーリンに会ったらメリアローザへの旅行を計画しよう。
素敵な妄想を頭の中で育てていると、愛しい我が愛義娘がコーヒーを淹れてきてくれた。
最近ずっとハマってる烙耀豆のコーヒー。フルーティーな豆の甘味とバランスのとれた酸味、渋み、苦みが心地よい、久々にドはまりした飲み物。
さぁ、クラリスを隣に座らせて、今日あったことを話しましょう。
華恋ちゃんもミレナさんもいる。素敵な思い出で盛り上がろう♪
「お待たせいたしました、インヴィディアさん。温かいうちにどうぞ♪」
「ええ、ありが――――あれ? これは、レモンバーム?」
あら、おかしいわね。注文したのはコーヒーのはずなのに。
「ねぇ、クラリス? 私はコーヒーを
「今日のスイーツにはハーブティーが合いますよ♪」
「――――――そ、そうなのね。それじゃ、いただくわ」
「はいっ!」
満面の笑みを向けて食堂に消えていく彼女を呼び止めることができなかった。
なんだろう。クラリスからものすごい圧を感じる。
え?
もしかして、私、なにかクラリスに嫌われるようなことをした?
どういうわけかレモンバームの味がしない。
お風呂に入ったばっかりなのに寒気がする。
え、もしかして、考えすぎ?
いや、私の経験からして間違いない。私は知らぬ間になにかをやらかした!
でも心当たりがないッ!
どうしよう。どうしようかと辺りを見渡しても解決策が転がってるはずもない。最も簡単な方法はクラリスに話しを聞くこと。
だけどそれはできない。私だって齢1000年を生きてきたプライドがある。本人に直接聞くなんてできるはずがない。
ここはこっそり、暁ちゃんに聞いてみよう。
「ねぇ、暁ちゃん。私もしかして、クラリスになにか悪いことをしたかしら?」
おいしそうにハーブティーを飲み下す彼女は呆れたような、申し訳なさそうな笑顔を浮かべ、最後に安堵の表情をして私の心と距離をとった。
「それに気付けただけで、クラリスとベレッタの立てた作戦は成功かもしれませんね」
「それちょっとどういう意味ッ!?」
「おっと、シェリーさんとサンジェルマンさんに呼ばれてしまいました。それではまたあとで♪」
体よく逃げられてしまった。
これはつまり、自分で何とかしないといけない案件だわ!
まず私がクラリスにしたであろう失態を思い出そう。




