異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 49
アルマちゃんの隣でくつろぐ同年代の子に話しを振ろう。そうでないとアルマ節が無限に続く。アルマちゃんの話しを聞くのは楽しい。でも、他の人の話しも聞いてみたい。
だけど、今日の大事件のせいで記憶が曖昧みたい。
「サンジェルマンさんがガチ戦闘してるのに、それに食いついていけるクロさんヤバいです。性格もヤバいです」
「シェリーさんから話しはさらっと聞いたよ。クロさんって人の琴線に触れて、たいへんだったんだって?」
「具体的にたいへんだったのはサンジェルマンさんだけです。ニャニャたちはすぐに退避したです。でもサンジェルマンさんが足がっくがくしながら歩いてるところは初めてみたです」
齢50余歳にして若者より若いサンジェルマンさんの体力がレッドゲージになるなんて信じられない。クロさんの魔力の色がだいぶ弱っていたとはいえ、全快の時は恐ろしく強い輝きを持った人なんだろうなとは感じた。
それでも、武力でサンジェルマンさんを追い詰めるなんて。
他の冒険者もそう。1人1人が騎士団長クラスか中隊長クラスの実力者ばかり。アルマちゃんも、桜ちゃんもスカサハさんも。
飛び抜けて凄まじいのは暁さん。目の前に太陽を置いたような力強い光を放ってらっしゃる。魔力視をするとわたしの目が焼けてしまいそうなほど。
不意に暁さんを見て、彼女の言葉を思い出した。
どういうわけか、クロさんはハティさんのことが大嫌いらしい。暁さんにも聞いたところ、ハティさんもクロさんのことが大嫌いみたい。ハティさんが嫌いになる人間なんて想像もしてなかった。
クロさんはだいぶ癖のある性格みたい。でも、ハティさんには悪いけど、彼女も相当な曲者。癖の強い者同士、反発しあっちゃうのかな?
「そういえば、クロさんがいないね。一緒に風呂場に来たと思ったんだけど」
「クロさんは番頭さんに呼び止められてマッサージを受けてらっしゃいました。戦闘の後の超回復は大事ですからね」
「あ、なるほど。体のケアもかかさないなんて、こう言っては悪いけど、文明レベルのわりに健康意識というか、ヘルスケア方面の技術がすごく充実してるよね。わたしもあとでマッサージしてもらおう♪」
「私もすごく気になります。おうちで手軽にできるマッサージかなにかを習得したいです!」
それならと、アルマちゃんが番頭の紫ちゃんを呼びつけた。
「なんでえ、アルマ。温泉卵ならちょいと待ってな。今仕込んでっからよ!」
快活で声の大きな少女は東風谷紫。アルマちゃんの (数少ない)友達のひとり。
「ありがとう! それとは別にさ、異世界で出来た友達のリリィが
「アルマに友達だとッ!?」
「うるせえちょっと黙ってろッ!」
悪ノリがすごい。反面、冗談を言い合えるほどの仲ということ。わたしがこういう事を言ったら本気で心配されたり、真に受けられたりするだろうから、わたしは言わない。
「で、リリィってのはこっちのあんた乳でけえなあッ!」
これは本気で驚いてるやーつ。
ニャニャの胸を見て、紫ちゃんが絶望のため息をついた。
「おい、ニャニャさんはアルマたちより年上だぞ。アナスタシアさんたちにも同じことを言ったよな。学習しなさい」
「わ、わりぃ……あんまりでけえもんだから、つい。で、ええと、リリィってのは誰だい?」
「わ、私です…………」
「――――仲良くしようぜっ!」
「おいちょっと紫お前こっち来ぉーーーーい!」
紫ちゃんはリリィの顔を見て、胸元を見て、サムズアップしていい笑顔を見せた。
なにかに共感したみたいです。




