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異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 41

 続いてはルイベを解凍したのちに米麹に浸けたもの。麹に浸けたルイベは初めて食べる。さて、お味はいかに?


「引き締まったサーモンの旨味と米麹の甘じょっぱい味が口の中で混然一体となって心を潤す。なんという旨さ。旨いという言葉しか出てこない。あっ!」


 感嘆符を出した理由は簡単だ。机の上にそっと置かれた酒瓶。米焼酎である。米麹に焼酎。これは酒が止まらなくなる組み合わせ!

 僕はハイラックス人なので、主観的にはワインを飲んできた人種。だが、僕はワインもウィスキーも、ハブ酒、テキーラ、ウォッカ、ビールにスパークリングだってなんでもござれ。無論、焼酎も大好きです!

 脊髄反射的に手を伸ばす。が、僕より先にボトルの首を掴んだ女性がいた。ラム・ラプラス。酒好きバーテンダーに先を越された。ちょっと悔しい!


「ふっふっふっ! 英雄と呼ばれるサンジェルマンさんを越えてみせましたよっ!」

「目の前にいた俺が全く反応できない速さでしたね。サンジェルマンさんも神速の勢いで腕を伸ばしてましたけど……」

「くっ……! 久々の敗北感だ」

「あなた、体力が落ちてきたんじゃない?」

「それもあるかもしれないけれど、昼過ぎにガチ戦闘したから疲れて……いや、言い訳は男らしくない!」

「ガチ戦闘ってマジっすか!? あ、一献どうぞ」

「わぁ、ありがとう!」


 最初に手をつけたラムくんは年長者の僕からお酌をしてくれた。なんて優しいんだ。次に家族が集まったら、バルにご飯を食べに行こう。

 同じ卓の人たちにお酌をして、最後に僕がラムくんにお酌をする。杯を掲げて乾杯。

 酒。ルイベ。酒。ルイベ。酒ルイベ酒ルイベ酒ルイベ。


「旨いッ! ぜひとも炙りも食べたい」

「専用というわけではありませんが、テーブルに置いて使える簡易トーチがあるそうなので借りてきますね」


 そう言って、働き者のベレッタくんが厨房へ消えていく。

 テーブルに置かれたトーチはマジックアイテムのひとつ。ミノタウロスの骨を削って作られた立方体には魔術回路が刻まれ、魔力を流すと中央の窪みから火が灯るという仕組み。年輪のように刻まれた5層に広がる円で炎の広さを調節できる便利アイテム。

 今回はルイベを炙るから、最も広い5層目まで炎を広げ、出力を抑えて広く浅い炎を出した。

 見知らぬマジックアイテムのため、ベレッタくんが簡潔に説明をしてくれる。


「側面の四面のいずれかに衝撃が加わるか、底辺が接地面から離れると自動的に火が消えます。注いだ魔力が無くなった時も火が消えます。前者はトーチが転倒した時に火が燃え移らないようにするための加工だそうです。立方体なので、そうそう転がったりはしませんが」

「なにそれ超便利。10個くらい欲しい」

「ひとつの素材に、【衝撃検知】【接触検知】【火炎生成】【魔法の起動範囲限定】さらに条件付けをした魔術回路の遮断機構まであるのか。いったいどんな術式が組まれてんだ?」


 アーディくんは好奇心のままにマジックアイテムを持ち上げると火が消えてしまった。素晴らしい。接地面から離れた瞬間に完璧に火炎が消えた。

 感心するも今は言葉に出せない。ラムくんが炙りルイベに挑戦しようというのに、火を消されて激怒したからだ。ごめん、アーディくん。僕も今は炙りルイベがしたいから君を擁護できない。


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