異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 39
彼女が顔を上げると同時に挨拶回りをする暁くんが彼女の隣にやってきた。
山菜採りの感謝を伝えに来たようだ。
「すみれ、レーレィさん、ラムさん、アーディ、ベレッタ、ご苦労様。エルドラドで山菜や果物をたくさん採取してくれたんだってな。本当にありがとう。彼らが住み始めて1年以上経つんだが、食用の山菜や果実の詳しい調査が後回しになっていてな。山の恵みはまだまだ手付かずだったんだ。今日のことで食べられる山の幸の知見が増えたと、みな喜んでいたよ」
「いえいえ、そんな、私たちこそ楽しい時間を過ごさせていただきました。ね、みなさん?」
振り返って、楽しい時間を過ごした仲間も満面の笑みで頷いた。
彼女たちの顔を見て、暁くんは再び感謝の言葉を贈る。
「本当にありがとう。それにしても大変だったろう。採取した山の幸が多すぎて、急遽、マンモスに荷馬車を引かせるほどに大量だったと聞いたぞ?」
マンモスに荷馬車を引かせるほどに!?
「目算で300キロくらいだったと思います」
「自然薯なんかもあるって聞いたから重量の重い物もあったんだろうが、半分近くは野草だろう。それで300キロって…………しっかり食べて、しっかり休んで明日に備えてください。メリアローザを楽しんでいってくださると嬉しいです」
「次は隣のお山の散策ですねっ!」
「「「「「また行くのッ!?」」」」」
これには全員がつっこんだ。山菜採りは楽しかった。だけど、2ラウンド目は勘弁してくれと泣きついた。
「すみれちゃん、山菜採りもいいんだけど、エルドラドの人たちは上手に食材が使いこなせないかもだから、やるなら料理にしない? 私はもう足がぱんぱんで……」
一般人のレーレィはもともとあまり動きたくない派。
「そうそう。明日は食べ歩きに行こう。作るのもいいけど、食べるのも勉強のうちだから」
ラムくんは食道楽を楽しみたい派。
ベレッタくんは話題を逸らそうと頭をひねる。
「明後日はキキちゃんとヤヤちゃんおすすめの山狩りに行くんだよね? それがあるから、明日はゆっくりしたいな。わたしもメリアローザのご飯を食べてみたい。すみれは以前にもメリアローザに来たんだよね? 特によかったところってある?」
「全部ですね! 全部おいしいです!」
「あ、ごめん。聞き方が悪かったね……」
たしかに。この子なら全部おいしいと言うだろう。




