異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 35
それはそれとして、彼らの努力の結晶には対価を支払わなくてはならない。
でもなにを必要としてるのか分からないのでこう伝えよう。
「ぜひ、ベルン側の世界にメリアローザで必要なものがあればなんでもおっしゃってください。と言って、何があるか分からないと思いますので、そうですね、近々、オータムフェスティバルがありますので、まずはそれに参加してみてはいかがでしょう。下見をしていただいて、後日、正式に視察ということで来訪されてみては」
「それはありがたい申し出ですねえ! しかしそんなに歓迎してくださらなくてよろしいのですよ。アルマちゃんは太陽のギルド所属ですが、魔術師組合にも席を置いております。彼女がよりよく成長する手助けをしていただければと考えております」
「もちろんですとも!」
僕より先に陽介さんの言葉に答えたのはシェリーくんだった。アルマくんのことを気に入る彼女はどうしてもレナトゥスに引き入れたくて仕方ない。
なので当然、勧誘を始める。
「それでしたら、メリアローザとベルンの魔法技術向上の橋渡しとして、アルマにもレナトゥスの席に座っていただきたい。そうすれば技術の伝達もすり合わせも、その他諸々も円滑に進みますよ!」
「シェリーさんの圧がすげえっ!」
鬼気迫るシェリーくんの気迫にアルマくんが体をこわばらせる。
彼女は本気だ。できれば僕もアルマくんにレナトゥスに来てほしい。
攻撃魔法もいいけど、空中散歩やパレスミステリーみたいなマジックアトラクションの研究を進めて欲しい。
どうにかしてアルマくんをレナトゥスに入れられないか。外部協力者として在籍する形でも構わない。
外部協力者と言えば、そうだ、彼女の魔法も研究したい。メレノア女史に頼まれてたんだった。僕としたことが、すっかり忘れてた。せっかく昨日会ったのに。
「あ、そうだ。彼女も一緒にレナトゥスにどうかな?」
「彼女?」
「オートファジーの魔法を開発した、ハティ・ダイヤモンドムーン。龍脈に魔法をかけたという彼女の魔法を披露してもらいたいんだ」
「あっ、その名前はッ!」
アルマくんが冷や汗を吹き出す背後で、鬼神の如き形相のクロくんが大剣を横振りした。
誰あろう、僕の首めがけて。躊躇なく。渾身のひと振りを繰り出す。




