異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 32
複合魔法。単体で発動する魔法を複数かけ合わせることで、複合した能力、あるいは全く別の魔法を発動させる技術。
理論上はインスタントマジックでの複合魔法は可能であるが、ベルン側の世界のインスタントマジックの素材の耐久力が低く実現に至らぬ技術のひとつ。
陽介さんは僕の驚いた様子を察して複合魔法の説明と実演を提案してくれる。
「例えば、水生成のインスタントマジックに火球のインスタントマジックを組み合わせると」
二枚の札を重ね合わせて魔力を注ぐ。すると、インスタントマジックの前方に魔法陣が現れ、魔力の出力に応じた量の熱水が飛び出した。
「熱水の魔法が発現します」
と言って、全員を見渡したのち、陽介さんはリリィくんに微笑んだ。
「こちらの魔法の組み合わせはとても人気が高く、冒険者なら必ず持ち歩く組み合わせです。ダンジョン内で野営する時、どんな時でも熱水が出せると、料理に使ったり体を拭いたりと便利ですからねえ。特に野戦での医療行為に重宝されます。すぐにお湯が欲しい場面は存外多いですからねえ」
「このインスタントマジックがあれば、簡単に迅速にお湯が手に入るということですね。環境によっては火を熾しづらかったり、水が不衛生だったりしますからね。水と火の魔力持ちの方がいない時の代替案としてとても貴重だと思います!」
「ちなみに、インスタントマジックの耐久力がそこそこあるので、出力を抑えて使えば魔術回路が焼ききれないので複数回にわたって使い回しができます。冒険者界隈では、このインスタントマジックのセットを【水筒】と呼んでいます。場所を選ばず飲み水が手に入るので」
「いよいよ便利!」
使用回数はあるのだろうが、持ち運びしやすい水筒の代案という意味では超優秀。
魔力の出力次第で複数回の使い回しが可能。水量調整可。熱水の温度も自由自在。便利すぎる。騎士団員全員に3セットは持たせたい。
緊急時の備蓄という意味でも、各家庭に5セットは配布したい。




