異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 31
雑談もそこそこに、早足ながらマジックアイテムの視察といこう。
多くの場所は草食モンスターの生息地。だけど、一部地域はモンスターが出現しない野原があるという。件のアルマくんが魔法演習に使って焼け野原になった跡地だ。今日はそこでマジックアイテムをぶっ放そう。
探索用ゲートを2つくぐると、眼前に巨大な砂地のある場所に出た。
不自然に焼け野原になった跡がある。人が踏みしだいて獣道になった、という雰囲気の地形。どうやら常習的に魔法の実験を行ってるようだ。アルマくん以外にも魔法ぶっぱ大好き人間がいるらしい。
魔法ぶっぱしてる人がいるんだろうなぁ。
多分、その1人はアルマくんなんだろうなぁ。
と思いながらも、特につっこむ理由のない我々は最初に説明されたインスタントマジックを手に取った。
魔力を流すだけで魔法が発動する使い切りの便利アイテム。
それもエーテル体結晶と人類の叡智によって強化された、我々の世界では作りようのない一級品。なかなかどうして期待が高まりますなあ。
シェリーくん、レオくん、サンジェルマン、ニャニャくん、リリィくんが横一列に並び、初級魔法のファイヤーボールのインスタントマジックを発動させる。
「「「「「ファイヤーボール!」」」」」
インスタントマジックだから魔法名を叫ばなくても発動するんだけど、ついつい癖で口走った。
直径約1メートルの火の玉が前方まっすぐに飛んでいく。
目測、シェリーくんは80メートル。
レオくんと僕が120メートル。
ニャニャくんが100メートル。
リリィくんが60メートル。
魔力が尽きた時点で自然に消えた。なるほど。こんなの撃ちまくったら、そりゃ焼け野原になる。
「す、すごい……適正の少ない火属性の魔法でも、インスタントマジックならこんなに高威力で、それもすごい長い距離を飛んでいきました」
医療術者志望のリリィくんが感動と恐怖が入り混じった声色を見せる。
彼女は人を癒すヒーラー。人を傷つけるであろう魔法を放ったことと同時に、適正でない属性の魔法を放った感動で身を震わせた。
反対に魔法職戦闘狂のニャニャくんは目を輝かせて飛び跳ねる。
「すごいですっ! これがインスタントマジックだなんて信じられないですっ! とんでない威力です!」
インスタントマジックの威力を体感して冷や汗を流すレオくんも彼女に同意する。
「ああ……これはまたとんでもない威力と飛距離だ。そのへんの魔術師の魔法なんか目じゃないな」
彼の言葉に異を唱える者が現れた。婚約者のクロくんだ。
「インスタントマジックは早打ちするには便利だし、魔力の節約にもなるが、威力が頭打ちなんだよ」
的確な指摘に陽介さんが肯定と補足を加える。
「そうですねえ。魔力を流すだけで簡単に使えるというのがインスタントマジックの長所です。同時に、術者の練度もあるので威力と飛距離に誤差はありますが、基本的に性能以上の火力が出ることはありません。くわえて、エーテル体結晶で作った疑似龍穴で加工したインスタントマジックは威力のクオリティが上がると同時に、多少の魔法抵抗力を持ってしまうので、ある程度の魔力の練度とそれ相応の魔力が必要になってきますねえ。未加工のものに比べると、5割増しくらいの魔力を要求されますねえ」
「なるほど。それで魔法を発動しようとした時に、魔力を強く押し出すような感覚があったわけか。魔法抵抗力が加わったということですね。なかなかどうして、慣れれば問題ないとはいえメリットばかりではないですな」
「おっしゃる通りですねえ。あとは使いどころや、使い方の工夫次第と言ったところでしょうかねえ。罠のように設置したり、数種類の属性の魔法を連射したり組み合わせたり」
「組み合わせ。インスタントマジックで複合魔法を発動させることができるんですか!?」




