異世界旅行2-2 水晶のように煌めく時を 30
薔薇の塔27層【フリーダム・フロウ】。
トリケラトプスや首長竜、中型の狼などが生息する原始の世界。薔薇の塔の入り口から入ってすぐの転移陣から見える世界は緑と青、そして人が住む小さなテントがある。
それを見たニャニャくんが当然の質問をアルマくんに問う。
「え、ダンジョンの中で生活してるです?」
「アールロイ・バルクロイさんです。自由気ままに一人暮らしをしてらっしゃいます。フリーダム・フロウは討伐したモンスターは食肉にできるので、それを売ってメリアローザで買い物してます。屠殺がとても上手なので、冒険者に指南して授業料をとってます。今日は珍しく留守のようですね。近場には野菜や山菜、ハーブが採れる場所があるので、食物繊維を求めて遠征されてるのかもしれませんね」
「食物繊維て……」
面白い表現をするなぁ。きっとすみれくんの影響だろう。とはいえ、肉ばかりの生活は栄養バランス的によくないのは確かだ。
辺りを見渡すと、湖の近くにトリケラトプスが見える。なんてこった。生きた恐竜がいる。調査団を派遣して生態を調べたい。
太古のロマンが今に生きる。ヘラくんが知ったらテンションがボルケーノしてしまうだろう。
次に目に留まったのはゲートの隣にある小さなゲート。これはどこかへ繋がってるのだろうか?
「陽介さん、こちらのゲートはいずこかに出入口があるのですか?」
「こちらは超長距離探索者用のゲートですね。ここから約1キロ先の地点にゲートが敷設されていて、簡単にそこまで移動できます。この27層は少し特殊でして、ひと組だけですが、ダンジョンの完全制覇を目指す一団がいるのです」
「ダンジョンの完全制覇!」
「そうです。ダンジョンがどこまで広がっているのか、どこにどんな動物が生息していて、果物があって、景色があって、天候があって、そういった全てを記録する探索者です。もうかれこれ1200個近く、ゲートを敷設したと聞いてますねえ」
「それはすごい。まさに世界を識る偉業ですね。ぜひとも会って話しがしたい」
「今は遠征中ですから直接は無理でしょうが、記録した情報は手元にあるのでお見せできますねえ」
「おお! ぜひ見せていただけると嬉しいです」
世界を識る旅。素晴らしいじゃないか!
ここはロマンに溢れる場所だ。




